2014年 03月 11日
ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅 |
長年ビール会社で地味に働き、定年退職した65歳のハロルド・フライはイングランド南西部の海辺の町キングズブリッジでひっそりと暮らしていた。妻とは家庭内離婚状態だし、ひとり息子とはもうずっと会っていない。そんな彼に、20年前に同僚だった女性から手紙が届いた。イングランド最北端のベリック・アポン・ツイードにあるホスピスで、癌で死にかけているという。手紙の返事を出しに出かけたハロルドは、そっけない手紙ではなく、直接会って感謝の言葉を伝えるべきではないかとの思いに駆られ、何も持たないままに歩き始めた・・・。
泣かされた~。お涙頂戴式の安っぽい話ではないし、淡々とした内省的な描写で、時には安易な感傷を突き放すかのように辛辣な部分もあるのだけれど、それでもやっぱり心を揺さぶられる。読者もハロルドと一緒に自分の心の奥深くまで覗きこんでしまうから。
ひとりで長い距離を歩いていると、最初のうちこそ周囲の風景に気をとられますが、だんだんと何を見ても変わりがなくなってきて、そうなるといつの間にか忘れていたはずの記憶が浮かびあがってきます。ハロルドの心に浮かんでくる記憶のほとんどは不幸なものばかりで、読んでいてつらくなるんですが、私たちがそれに耳を傾け続けていれば、最後に救いが訪れるのではないかと、ハロルドがクイーニーに対して抱いたのと同じような願いを抱いてしまうみたい。だから、読み始めたらやめられない。
本の見返し部分がイギリスの地図になっていて、そこにハロルドが歩いたルートが描きこまれているのですが、それを見ると気が遠くなるほどの距離(1000km強)です。老人だから一日に10~13kmくらいしか歩けない。いや、老人じゃなくても毎日毎日、何週間も歩き続けるとしたら毎日何十kmも歩けやしません。私だったら1週間くらいで病気になってリタイアしそう。まあ、これは実話ではないので真剣に考えることもありませんが。
歩き始めた時期が春から夏にかけての時期なので、歩く道々に見られる野の花や、丘や川や空など自然の描写がとても楽しめます。
ふと思い出したのですが、映画「フォレストガンプ」の後半の走るところにちょっと似てる面もあるかも。あっちはずっと盛りだくさんだし、この本みたいに内省的ではありませんが。そういえば映画化はされないのかな、と思ったら訳者あとがきで映画化権がもう売れてると書いてありました。風景を見るのが楽しみ。できればハリウッド大作ではなく、こじんまりとしたイギリス映画にしてほしい。
ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅
原題:The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry
作者:レイチェル・ジョイス
訳者:亀井よし子
出版社:講談社
ISBN:4062184007
泣かされた~。お涙頂戴式の安っぽい話ではないし、淡々とした内省的な描写で、時には安易な感傷を突き放すかのように辛辣な部分もあるのだけれど、それでもやっぱり心を揺さぶられる。読者もハロルドと一緒に自分の心の奥深くまで覗きこんでしまうから。
ひとりで長い距離を歩いていると、最初のうちこそ周囲の風景に気をとられますが、だんだんと何を見ても変わりがなくなってきて、そうなるといつの間にか忘れていたはずの記憶が浮かびあがってきます。ハロルドの心に浮かんでくる記憶のほとんどは不幸なものばかりで、読んでいてつらくなるんですが、私たちがそれに耳を傾け続けていれば、最後に救いが訪れるのではないかと、ハロルドがクイーニーに対して抱いたのと同じような願いを抱いてしまうみたい。だから、読み始めたらやめられない。
本の見返し部分がイギリスの地図になっていて、そこにハロルドが歩いたルートが描きこまれているのですが、それを見ると気が遠くなるほどの距離(1000km強)です。老人だから一日に10~13kmくらいしか歩けない。いや、老人じゃなくても毎日毎日、何週間も歩き続けるとしたら毎日何十kmも歩けやしません。私だったら1週間くらいで病気になってリタイアしそう。まあ、これは実話ではないので真剣に考えることもありませんが。
歩き始めた時期が春から夏にかけての時期なので、歩く道々に見られる野の花や、丘や川や空など自然の描写がとても楽しめます。
ふと思い出したのですが、映画「フォレストガンプ」の後半の走るところにちょっと似てる面もあるかも。あっちはずっと盛りだくさんだし、この本みたいに内省的ではありませんが。そういえば映画化はされないのかな、と思ったら訳者あとがきで映画化権がもう売れてると書いてありました。風景を見るのが楽しみ。できればハリウッド大作ではなく、こじんまりとしたイギリス映画にしてほしい。
ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅
原題:The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry
作者:レイチェル・ジョイス
訳者:亀井よし子
出版社:講談社
ISBN:4062184007
by timeturner
| 2014-03-11 20:31
| 和書
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