2014年 02月 24日
コリーニ事件 |
2001年5月のベルリンで、67歳のイタリア人で元自動車組立工のコリーニが85歳の実業者ハス・マイヤーを銃で殺害し、逮捕された。新米弁護士ライネンが国選弁護人を引き受けたが、コリーニは殺害動機を話そうとしない。そのうえ、被害者がライネンの少年時代の親友の祖父だったことがわかる・・・。
むだのない、研ぎ澄まされた文章がすごくいい。ふつうの作家だったら、これだけの材料があれば倍以上のページ数を費やして、被害者側、加害者側関係者の詳細やら、殺人に至る前の経緯、ライネンの私生活や仕事の上でのさまざまな確執など微に入り細に入り説明するところを、シーラッハは淡々と事実だけをつないでいく。
それでいて決して味気ない報告書ではない。登場人物たちの性格付けと配置が絶妙で、多くを語らなくても自然に読者の頭の中で物語が広がっていく。いやあ、巧いなあ。ジャンルとしてはミステリーに入るのかもしれませんが、読み心地は非常に文学的。
シーラッハはこれまで話題になった『犯罪』も『罪悪』も、読んだあとにいやな気分になりそうだったので避けていましたが、こういうタッチなんだったら読んでもいいかなあという気がしてきました。
作者がこれを書くもととなった法律については、ただただ愕然とします。この小説がきっかけになって見直しが検討されるようになったことは喜ばしいけれど、無数のコリーニが泣き寝入りしてきたのかと思うとやりきれない気持ちになりますね。
コリーニ事件
原題:Der Fall Collini
作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ
訳者:酒寄進一
出版社:東京創元社
ISBN:4488010008
むだのない、研ぎ澄まされた文章がすごくいい。ふつうの作家だったら、これだけの材料があれば倍以上のページ数を費やして、被害者側、加害者側関係者の詳細やら、殺人に至る前の経緯、ライネンの私生活や仕事の上でのさまざまな確執など微に入り細に入り説明するところを、シーラッハは淡々と事実だけをつないでいく。
それでいて決して味気ない報告書ではない。登場人物たちの性格付けと配置が絶妙で、多くを語らなくても自然に読者の頭の中で物語が広がっていく。いやあ、巧いなあ。ジャンルとしてはミステリーに入るのかもしれませんが、読み心地は非常に文学的。
シーラッハはこれまで話題になった『犯罪』も『罪悪』も、読んだあとにいやな気分になりそうだったので避けていましたが、こういうタッチなんだったら読んでもいいかなあという気がしてきました。
作者がこれを書くもととなった法律については、ただただ愕然とします。この小説がきっかけになって見直しが検討されるようになったことは喜ばしいけれど、無数のコリーニが泣き寝入りしてきたのかと思うとやりきれない気持ちになりますね。
コリーニ事件
原題:Der Fall Collini
作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ
訳者:酒寄進一
出版社:東京創元社
ISBN:4488010008
by timeturner
| 2014-02-24 21:14
| 和書
|
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