2014年 02月 13日
荒野にネコは生きぬいて |
子猫は車からおろされた。いつもの追いかけっこだと思っていたら、車はどんどん先へ行ってしまい、子猫は寂しい荒野に取り残された。きのうまではやさしい母猫や飼い主の庇護のもとで、怖い思いもひもじさも知らずにいたのに、きょうからは危険な野生動物や厳しい自然を相手に生きていかなくてはならないのだ・・・。
すさまじくシビアな内容でした。全体のストーリーラインは『駅の小さな野良ネコ』によく似ているけど(もしかしたらあっちの作者はこれを読んだことがあったのかも)、あちらが少年の視点から描いた人情ドラマであったのに比べて、こちらは完全に猫の視点で描いたリアルで恐ろしい闘いの記録です。人間のセンチメンタルな共感など完全に拒否し、冷たいとも思えるようなそっけない筆致で淡々と描かれています。
主な舞台となっているイングランド北部のムーアは、冬の寒さが厳しく、野生の鳥でさえも冬には凍って空から落ちるほどの土地。そんなところに本来は人間と共に暮らす猫が置き去りにされたのですから、生き延びることがどれほど大変なことか想像に難くありません。
小動物を狩って食べるようすなど、都会暮らしの人間には読むのがつらい場面がたくさんありますが、これが現実なんですよね。でも、本能に支えられながら誰にも頼らずに誇り高く、力強く生きていく猫の姿は、勝手な想像ではありますが、崇高にさえ見えてきます。人間も、本来生きることはこういうことなのかもしれない、なんて思いました。いやあ、でも、私には無理。すぐに死んじゃいます。というか、こんな苦労してまで生きてたくないとあきらめちゃう。
最初から最後まで生きるための闘いだけだと読むほうも息が詰まってしまうので、作者もところどころでやさしい人間とのふれあいを用意してくれています。野生の猫としての暮らしに順応し、たくましく育った猫でも、時と場合によっては人間の愛情を求め、甘えることを思い出すんですよね。もっとも、作り話めいたところは微塵もなく、最後までリアリズムが貫かれていますが。
荒野にネコは生きぬいて (文研じゅべにーる)
原題:Abandoned
作者:G.D.グリフィス
イラスト:福永紀子
訳者:前田三恵子
出版社:文研出版
ISBN:4580814819
すさまじくシビアな内容でした。全体のストーリーラインは『駅の小さな野良ネコ』によく似ているけど(もしかしたらあっちの作者はこれを読んだことがあったのかも)、あちらが少年の視点から描いた人情ドラマであったのに比べて、こちらは完全に猫の視点で描いたリアルで恐ろしい闘いの記録です。人間のセンチメンタルな共感など完全に拒否し、冷たいとも思えるようなそっけない筆致で淡々と描かれています。
主な舞台となっているイングランド北部のムーアは、冬の寒さが厳しく、野生の鳥でさえも冬には凍って空から落ちるほどの土地。そんなところに本来は人間と共に暮らす猫が置き去りにされたのですから、生き延びることがどれほど大変なことか想像に難くありません。
小動物を狩って食べるようすなど、都会暮らしの人間には読むのがつらい場面がたくさんありますが、これが現実なんですよね。でも、本能に支えられながら誰にも頼らずに誇り高く、力強く生きていく猫の姿は、勝手な想像ではありますが、崇高にさえ見えてきます。人間も、本来生きることはこういうことなのかもしれない、なんて思いました。いやあ、でも、私には無理。すぐに死んじゃいます。というか、こんな苦労してまで生きてたくないとあきらめちゃう。
最初から最後まで生きるための闘いだけだと読むほうも息が詰まってしまうので、作者もところどころでやさしい人間とのふれあいを用意してくれています。野生の猫としての暮らしに順応し、たくましく育った猫でも、時と場合によっては人間の愛情を求め、甘えることを思い出すんですよね。もっとも、作り話めいたところは微塵もなく、最後までリアリズムが貫かれていますが。
荒野にネコは生きぬいて (文研じゅべにーる)
原題:Abandoned
作者:G.D.グリフィス
イラスト:福永紀子
訳者:前田三恵子
出版社:文研出版
ISBN:4580814819
by timeturner
| 2014-02-13 18:53
| 和書
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