2014年 02月 05日
ユニオン・クラブ綺談 |
ユニオン・クラブの談話室では、ある三人のメンバーが雑談に花を咲かせていると、必ず、かたわらで居眠りをしているグリズウォルドが目を覚まし、奇想天外なエピソードを語り始める・・・。
予想通り面白かった。安楽椅子探偵グリズウォルド氏は文字通りの意地悪じいさん。博覧強記で観察力にすぐれ、傲慢で人を人とも思わない。そう、シャーロックが年をとったらまさにこうなるだろうという人物です。気に入らないわけがない。
話の舞台は1950~1980年代のアメリカで、当時の世界情勢、政治情勢がたくさん出てきます。私はアメリカのことはよく知らないので、そのうちどのくらいが事実に即したものかはわかりませんが、想定されていた読者はアメリカ人だったのですから、かなり現実に近いところをついていたのではないかな。今読めばその後の展開もわかっているから、事情通の人ならさらに面白く読めるのでしょうね。冷戦時代の話やマッカーシーの赤狩り、例のFBI長官らしき人物なども登場します。
アシモフのことですから、当然科学的な話題もいくつもあって、コンピュータに関する話などは最新機器としてワープロが登場するなど、ヴァージョンは古いものの、根底の部分では今でも古びずに通用する話が多くてさすがだなと思いました。
最後の「ダラスのアリス」は鍵となる手がかりがリメリック形式の詩になっているというので原文を知りたいと思ってネット検索したら、どうやらAliceとDallaceが出てくる卑猥なリメリックがあるようですね。掲載されていたのはエロ雑誌だったようなので、読者のほとんどはダラスのアリスと聞けば「ああ、あれか」とにやっとすることを予測していたのでしょう。そういえば「まえがき」で、好色文学は書かないが時に艶笑リメリックを書くことがないではない、と言ってたっけ、とまたまたくすりと笑わされました。
アシモフはここに収載した30編以降にもまだこのシリーズを書き続け、計55編が世に出たそうですが、そのうち3編は他の作品集に収められたものの、あとの22編はそのままになっているらしい。惜しいなあ。訳者あとがきにあるように、池さんが翻訳して出してくれればいいのに。
ユニオン・クラブ綺談 (創元推理文庫)
原題:The Union Club Mysteries
作者:アイザック・アシモフ
訳者:池 央耿
出版社:東京創元社
ISBN:4488167071
予想通り面白かった。安楽椅子探偵グリズウォルド氏は文字通りの意地悪じいさん。博覧強記で観察力にすぐれ、傲慢で人を人とも思わない。そう、シャーロックが年をとったらまさにこうなるだろうという人物です。気に入らないわけがない。
1 逃げ場なし (No Refuge Could Save)雑誌連載物だったので一編二千語程度と非常に短い。文庫本のページ数にして10ページ程度です。それなのに毎回、さまざまなテーマ、さまざまなトリックで、しかも必要なヒントはすべて読者の前にさらしたうえで、最後にあっと言わせる解決をもってくるのですから、並大抵のことではありません。これを毎月やっていたのかと思うとアシモフの創造力に舌を巻きます。もっとも、ときどき「いくらなんでもそれは無理だろう」という謎解きもありましたが、それでも、うまくだまされた快感に笑みを浮かべてしまうのは、書きっぷりにアシモフの人柄が出ているからなのかな。ちなみに、ヒントを提示された段階で謎をとくことができたのは2、3編だけでした。負けた。
2 電話番号 (The Telephone Number)
3 物言わぬ男たち (The Men Who Wouldn't Talk)
4 狙撃 (A Clear Shot)
5 艶福家 (Irresistable to Women)
6 架空の人物 (He Wasn't There)
7 一筋の糸 (The Thin Line)
8 殺しのメロディー (Mystery Tune)
9 宝さがし (Hide and Seek)
10 ギフト (Gift)
11 高温 低温 (Hot or Cold)
12 十三ページ (The Thirteenth Page)
13 1から999まで (1 to 999)
14 十二歳 (Twelve Years Old)
15 知能テスト (Testing, Testing!)
16 アプルビーの漫談 (The Appleby Story)
17 ドルとセント (Dollars and Cents)
18 友好国 同盟国 (Friends and Allies)
19 どっちがどっち? (Which is Which?)
20 十二宮 (The Sign)
21 キツネ狩り (Catching the Fox)
22 組み合わせ錠 (Getting the Combination)
23 図書館の本 (The Library Book)
24 三つのゴブレット (The Three Goblets)
25 どう書きますか? (Spell It!)
26 二人の女 (Two Women)
27 信号発信 (Sending a Signal)
28 音痴だけれど (The Favorite Piece)
29 半分幽霊 (Half a Ghost)
30 ダラスのアリス (There Was a Young Lady)
話の舞台は1950~1980年代のアメリカで、当時の世界情勢、政治情勢がたくさん出てきます。私はアメリカのことはよく知らないので、そのうちどのくらいが事実に即したものかはわかりませんが、想定されていた読者はアメリカ人だったのですから、かなり現実に近いところをついていたのではないかな。今読めばその後の展開もわかっているから、事情通の人ならさらに面白く読めるのでしょうね。冷戦時代の話やマッカーシーの赤狩り、例のFBI長官らしき人物なども登場します。
アシモフのことですから、当然科学的な話題もいくつもあって、コンピュータに関する話などは最新機器としてワープロが登場するなど、ヴァージョンは古いものの、根底の部分では今でも古びずに通用する話が多くてさすがだなと思いました。
最後の「ダラスのアリス」は鍵となる手がかりがリメリック形式の詩になっているというので原文を知りたいと思ってネット検索したら、どうやらAliceとDallaceが出てくる卑猥なリメリックがあるようですね。掲載されていたのはエロ雑誌だったようなので、読者のほとんどはダラスのアリスと聞けば「ああ、あれか」とにやっとすることを予測していたのでしょう。そういえば「まえがき」で、好色文学は書かないが時に艶笑リメリックを書くことがないではない、と言ってたっけ、とまたまたくすりと笑わされました。
アシモフはここに収載した30編以降にもまだこのシリーズを書き続け、計55編が世に出たそうですが、そのうち3編は他の作品集に収められたものの、あとの22編はそのままになっているらしい。惜しいなあ。訳者あとがきにあるように、池さんが翻訳して出してくれればいいのに。
ユニオン・クラブ綺談 (創元推理文庫)
原題:The Union Club Mysteries
作者:アイザック・アシモフ
訳者:池 央耿
出版社:東京創元社
ISBN:4488167071
by timeturner
| 2014-02-05 20:35
| 和書
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