2013年 12月 30日
死の鐘はもうならない |
1665年の秋、イギリスにペストが大流行したとき、ダービシャーの小村イーアムは閉ざされた。人は出ることも入ることも許されず、囚人の村と化してしまう・・・。村の娘モールの目を通して描かれる生と死のドラマ。
あらすじを読んだとき、もしやと思ったのですが、前に読んだジェラルディン・ブルックスの『Year of Wonders』(邦題『灰色の季節をこえて』)と同じ史実を描いています。そういえばブルックスのあとがきにも、イーアムのことは小説や戯曲、さらにはオペラにまでされていると書いてありましたっけ。原題は仕立屋がロンドンから取り寄せた服の型紙のこと。当時は麻布で作られていたようで、それについてきたシラミがペスト菌を運んだと言われているらしい。
どちらの作家も残されている記録や郷土史家による資料を使っているので、ペストが始まってから収まるまでの過程や、登場するキャラクターは似ています。ただし、こちらはヤングアダルト向きに書かれているので、『Year of Wonders』ほどに善悪とりまぜた人間の性【さが】を深く描いてはいませんが、それでもやはり暗鬱な内容であることは確か。
興味深いと思ったのは、王政復古後わりあいすぐのことなので、まだ村人たちが清教徒的な教えに傾いていたというあたりです。サミュエル・ピープスのような、大都会に住むインテリが書いたものを読んでいると、人々はクロムウェル時代の清教徒的な生活から、王政復古後の享楽的な生活へと、さしたる苦労もなく軽やかに移行したように見えますが、中央からの情報がほとんど入ってこない辺鄙な田舎では、宗教は生き方の根底をなしていて、そう簡単に変えられるものではなかっただろうと気づかされます。
死の鐘はもうならない (現代の文学 (6))
原題:A Parcel of Patterns
作者:J・P・ウォルシュ
イラスト:喜多迅鷹
訳者:岡本浜江
出版社:国土社
ISBN:4337205063
あらすじを読んだとき、もしやと思ったのですが、前に読んだジェラルディン・ブルックスの『Year of Wonders』(邦題『灰色の季節をこえて』)と同じ史実を描いています。そういえばブルックスのあとがきにも、イーアムのことは小説や戯曲、さらにはオペラにまでされていると書いてありましたっけ。原題は仕立屋がロンドンから取り寄せた服の型紙のこと。当時は麻布で作られていたようで、それについてきたシラミがペスト菌を運んだと言われているらしい。
どちらの作家も残されている記録や郷土史家による資料を使っているので、ペストが始まってから収まるまでの過程や、登場するキャラクターは似ています。ただし、こちらはヤングアダルト向きに書かれているので、『Year of Wonders』ほどに善悪とりまぜた人間の性【さが】を深く描いてはいませんが、それでもやはり暗鬱な内容であることは確か。
興味深いと思ったのは、王政復古後わりあいすぐのことなので、まだ村人たちが清教徒的な教えに傾いていたというあたりです。サミュエル・ピープスのような、大都会に住むインテリが書いたものを読んでいると、人々はクロムウェル時代の清教徒的な生活から、王政復古後の享楽的な生活へと、さしたる苦労もなく軽やかに移行したように見えますが、中央からの情報がほとんど入ってこない辺鄙な田舎では、宗教は生き方の根底をなしていて、そう簡単に変えられるものではなかっただろうと気づかされます。
死の鐘はもうならない (現代の文学 (6))
原題:A Parcel of Patterns
作者:J・P・ウォルシュ
イラスト:喜多迅鷹
訳者:岡本浜江
出版社:国土社
ISBN:4337205063
by timeturner
| 2013-12-30 17:05
| 和書
|
Comments(2)
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by
八朔
at 2013-12-30 19:55
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サミュエル・ピープスの時代のペスト大流行の時の話なのですね。
読んでみたいです。
翻訳の岡本浜江さん、どこかでみた名前・・・と思ったら、カドフェルシリーズを訳した方だったのですね。
読んでみたいです。
翻訳の岡本浜江さん、どこかでみた名前・・・と思ったら、カドフェルシリーズを訳した方だったのですね。
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timeturner at 2013-12-31 18:12