2013年 10月 01日
だれも寝てはならぬ/今夜はだれも眠れない |
戦争で困っている世界の子どもたちへのチャリティのために編まれた短編集からピックアップして2冊に収めたもの。
『だれも寝てはならぬ』は大人も子どもも楽しめるちょっと怖い話がバラエティ豊富に収められています。
「アンダー・ザ・スキン」ではアステカ帝国の歴史が展示された博物館に、学校から団体で見学に行った子どもたちの話ですが、先生が携帯の持ち込み禁止と言っているところからも最近の作品なんだなあと感じます。
霊能力のある少年の苦しみと活躍を描く「スター」や上記の「アンダー・ザ・スキン」のように少年が主人公の作品もあれば、「ぽた、ぽた、ぽた」のように語り手は子どもだけれど話の主人公は大人というものもあるし、「珍品の館」のように子どもは全く出てこない、ちょっと古めかしいタイプの作品もあって、続けて読んでも飽きません。
背筋がぞくぞくする話という共通項はあるものの、そのゾクゾクの仕方は千差万別。そして、みんな巧い。人気の児童文学作家がそろっているので、これから読む作家の発掘にも役に立ちそうです。
第1話 少年はおののく
スター/マリアン・カーヒー
ぽた、ぽた、ぽた/マロリー・ブラックマン
アンダー・ザ・スキン/セリア・リーズ
珍品の館/フィリップ・アーダー
空の船/ジェラルディン・マコーリアン
動物園のふしぎな家具/デボラ・ライト
シーッ!/ブライアン・バッテン
ウサギのチャーリー/ガース・ニクス
第2話 これでもかというほどに――
ポッサムの真実/ジェームズ・モロニー
影泥棒/マーガレット・マーヒー
はみだし者/エヴァ・イボットソン
海をわたったカエルの話/ディック・キング=スミス
自伝のためのメモ/モーリス・グライツマン
チェリーパイ/ロス・アスキス
カルロスへ/マイケル・モーパーゴ
バブル・トラブル/ロジャー・マクゴー
モルモット・レース/ジョージア・ビング
アレックス・シアラーの『あの雲を追いかけて』を思い出させる「空の船」は、目の前にその場の光景が浮かんでくるような、イマジネーションあふれるすてきな作品。
ガース・ニクスの「ウサギのチャーリー」は、戦火にさらされる町で家の下敷きになった兄弟が、ぬいぐるみのウサギの助けを求めるという、この本の趣旨にふさわしい内容。短い中に弟を思う兄の心、戦争に対する思いが過不足なく描けているうえに、手に汗にぎるスリリングな展開、あっと驚くエンディングと、実に読みごたえのある内容です。国の名前は特定されていませんが、兄弟の名前がアッバスとヨシュアなので、中近東を思わせます。
マイケル・モーパーゴは第二次世界大戦の話がお得意ですが、ここではフォークランド戦争をテーマにしています。モーパーゴはイギリス人ですが、語り手をアルゼンチン人の兵士にして、どちらにも偏らない戦争反対を訴える内容になっています。
だれも寝てはならぬ (Kids’Night In)
原題:Kids' Night In
作者:ガース・ニクス、マーガレット・マーヒーほか
訳者:安次嶺佳子、内藤文子、橋本 恵、西本かおる
出版社:ダイヤモンド社
ISBN:4478930767
『今夜はだれも眠れない』は等身大の子どもたちの日常からすくいあげたさまざまな人生の断片をそれぞれの作家の個性で描いています。ちょっと笑えてほのぼのするような話が多い。でも、中途半端な占星術とか片手間に書いたようなエッセイ風のものがあったりして、姉妹編の『だれも寝てはならぬ』と比べると寄せ集め感が強い。
第1部 女の子は救われる
フリークエントフライヤー/メアリ・ホフマン
本物のレベッカ/ジャクリーン・ウィルソン
メアリーの髪/オーエン・コルファー
今夜は非番の天使たち/アニー・ダルトン
最後のハロウィーン/レイチェル・コーン
ヘンリーの「占星術ガイド」/ジェシカ・アダムス
第2部 そして信じる者も――
フェアリーテールじゃないよ/ジェレミー・ストロング
クマのマグワースとアルジー・ボタン/ブライアン・ジェイクス
マイティー・ワンの娘/ヴィヴィアン・フレンチ
王さまへの手紙/ジリアン・クロス
海からの贈りもの/ビヴァリー・ナイドゥー
ハグロサン/ダレン・シャン
山上の聖地で少年ハグロサンが精霊と遭遇し、生き方を決められてしまうという「ハグロサン」は、作者のダレン・シャンが山形県の羽黒山に登ったときに得たアイディアをもとに書かれたものだそうで(だからハグロサンなのか!)、日本の地霊信仰に通じる世界観を感じます。
今夜はだれも眠れない (Kids’Night In)
原題:Kids' Night In
作者:ダレン・シャンほか
訳者:内藤文子、西本かおる、橋本 恵
出版社:ダイヤモンド社
ISBN:4478930759
『だれも寝てはならぬ』は大人も子どもも楽しめるちょっと怖い話がバラエティ豊富に収められています。
「アンダー・ザ・スキン」ではアステカ帝国の歴史が展示された博物館に、学校から団体で見学に行った子どもたちの話ですが、先生が携帯の持ち込み禁止と言っているところからも最近の作品なんだなあと感じます。
霊能力のある少年の苦しみと活躍を描く「スター」や上記の「アンダー・ザ・スキン」のように少年が主人公の作品もあれば、「ぽた、ぽた、ぽた」のように語り手は子どもだけれど話の主人公は大人というものもあるし、「珍品の館」のように子どもは全く出てこない、ちょっと古めかしいタイプの作品もあって、続けて読んでも飽きません。
背筋がぞくぞくする話という共通項はあるものの、そのゾクゾクの仕方は千差万別。そして、みんな巧い。人気の児童文学作家がそろっているので、これから読む作家の発掘にも役に立ちそうです。
第1話 少年はおののく
スター/マリアン・カーヒー
ぽた、ぽた、ぽた/マロリー・ブラックマン
アンダー・ザ・スキン/セリア・リーズ
珍品の館/フィリップ・アーダー
空の船/ジェラルディン・マコーリアン
動物園のふしぎな家具/デボラ・ライト
シーッ!/ブライアン・バッテン
ウサギのチャーリー/ガース・ニクス
第2話 これでもかというほどに――
ポッサムの真実/ジェームズ・モロニー
影泥棒/マーガレット・マーヒー
はみだし者/エヴァ・イボットソン
海をわたったカエルの話/ディック・キング=スミス
自伝のためのメモ/モーリス・グライツマン
チェリーパイ/ロス・アスキス
カルロスへ/マイケル・モーパーゴ
バブル・トラブル/ロジャー・マクゴー
モルモット・レース/ジョージア・ビング
アレックス・シアラーの『あの雲を追いかけて』を思い出させる「空の船」は、目の前にその場の光景が浮かんでくるような、イマジネーションあふれるすてきな作品。
ガース・ニクスの「ウサギのチャーリー」は、戦火にさらされる町で家の下敷きになった兄弟が、ぬいぐるみのウサギの助けを求めるという、この本の趣旨にふさわしい内容。短い中に弟を思う兄の心、戦争に対する思いが過不足なく描けているうえに、手に汗にぎるスリリングな展開、あっと驚くエンディングと、実に読みごたえのある内容です。国の名前は特定されていませんが、兄弟の名前がアッバスとヨシュアなので、中近東を思わせます。
マイケル・モーパーゴは第二次世界大戦の話がお得意ですが、ここではフォークランド戦争をテーマにしています。モーパーゴはイギリス人ですが、語り手をアルゼンチン人の兵士にして、どちらにも偏らない戦争反対を訴える内容になっています。
だれも寝てはならぬ (Kids’Night In)
原題:Kids' Night In
作者:ガース・ニクス、マーガレット・マーヒーほか
訳者:安次嶺佳子、内藤文子、橋本 恵、西本かおる
出版社:ダイヤモンド社
ISBN:4478930767
『今夜はだれも眠れない』は等身大の子どもたちの日常からすくいあげたさまざまな人生の断片をそれぞれの作家の個性で描いています。ちょっと笑えてほのぼのするような話が多い。でも、中途半端な占星術とか片手間に書いたようなエッセイ風のものがあったりして、姉妹編の『だれも寝てはならぬ』と比べると寄せ集め感が強い。
第1部 女の子は救われる
フリークエントフライヤー/メアリ・ホフマン
本物のレベッカ/ジャクリーン・ウィルソン
メアリーの髪/オーエン・コルファー
今夜は非番の天使たち/アニー・ダルトン
最後のハロウィーン/レイチェル・コーン
ヘンリーの「占星術ガイド」/ジェシカ・アダムス
第2部 そして信じる者も――
フェアリーテールじゃないよ/ジェレミー・ストロング
クマのマグワースとアルジー・ボタン/ブライアン・ジェイクス
マイティー・ワンの娘/ヴィヴィアン・フレンチ
王さまへの手紙/ジリアン・クロス
海からの贈りもの/ビヴァリー・ナイドゥー
ハグロサン/ダレン・シャン
山上の聖地で少年ハグロサンが精霊と遭遇し、生き方を決められてしまうという「ハグロサン」は、作者のダレン・シャンが山形県の羽黒山に登ったときに得たアイディアをもとに書かれたものだそうで(だからハグロサンなのか!)、日本の地霊信仰に通じる世界観を感じます。
今夜はだれも眠れない (Kids’Night In)
原題:Kids' Night In
作者:ダレン・シャンほか
訳者:内藤文子、西本かおる、橋本 恵
出版社:ダイヤモンド社
ISBN:4478930759
by timeturner
| 2013-10-01 20:19
| 和書
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