2013年 05月 29日
Singing in the Shrouds |
2月の霧深い夜、ロンドンの埠頭で若い女性の絞殺死体が発見された。被害者の体の上にはヒヤシンスの花びらとフェイクパールが散らされ、殺人者のものと思われる歌声が聞かれた。ロンドンで連続して起こっている同種の殺人事件の4件目だった。被害者が片手に握りしめていた乗船券の切れ端から、真夜中にアフリカに向けて出航したCape Farewell号に殺人者が乗船していると考えられ、次の停泊地からスコットランド・ヤードのアレン警視が船に乗り込み、隠密捜査に乗り出した・・・。
警察側はアレンひとり、しかも船会社からの要請で表だった捜査はできないという孤立無援の状態。おまけに10日周期で殺人を犯してきた犯人があと数日で次の被害者に手をかける可能性が高く、4人の女性客の安全もはからなくてはならない。いくら泰然自若のアレン警視でもこれはきつい。
大海原を進む船の中という閉ざされた空間は、映画でよく言うグランドホテル形式で、そこに集まったそれぞれにクセの強い乗客たちが織り成す人間ドラマは興味深いし、次の殺人が目前に迫っている中での隠密捜査という緊迫感も楽しめました。
今回はフォックス警部とのやりとりがないので、捜査の経過は妻宛て(そう、いつの間にか結婚してるんです!)の手紙や、容疑者の範囲から外れている何人かとの相談という形で明らかにされるのですが、このあたりはかなり苦しい。というか、説明過多のきらいがある。
残念なのは、犯人逮捕後の精神分析がかなり薄っぺらで説得力に欠けること。作者がアレンの手紙の形を借りて得々と語っているのが恥かしく思えてしまう。まあ、この本の刊行が1959年ですから無理もないのですが。今この本の翻訳を出すのなら、この最後の部分は思い切って削除してしまったほうがいいんじゃないかなあ。
Singing in the Shrouds (The Ngaio Marsh Collection)
作者:Ngaio Marsh
出版社:Harper
ISBN:Kindle版
警察側はアレンひとり、しかも船会社からの要請で表だった捜査はできないという孤立無援の状態。おまけに10日周期で殺人を犯してきた犯人があと数日で次の被害者に手をかける可能性が高く、4人の女性客の安全もはからなくてはならない。いくら泰然自若のアレン警視でもこれはきつい。
大海原を進む船の中という閉ざされた空間は、映画でよく言うグランドホテル形式で、そこに集まったそれぞれにクセの強い乗客たちが織り成す人間ドラマは興味深いし、次の殺人が目前に迫っている中での隠密捜査という緊迫感も楽しめました。
今回はフォックス警部とのやりとりがないので、捜査の経過は妻宛て(そう、いつの間にか結婚してるんです!)の手紙や、容疑者の範囲から外れている何人かとの相談という形で明らかにされるのですが、このあたりはかなり苦しい。というか、説明過多のきらいがある。
残念なのは、犯人逮捕後の精神分析がかなり薄っぺらで説得力に欠けること。作者がアレンの手紙の形を借りて得々と語っているのが恥かしく思えてしまう。まあ、この本の刊行が1959年ですから無理もないのですが。今この本の翻訳を出すのなら、この最後の部分は思い切って削除してしまったほうがいいんじゃないかなあ。
Singing in the Shrouds (The Ngaio Marsh Collection)
作者:Ngaio Marsh
出版社:Harper
ISBN:Kindle版
by timeturner
| 2013-05-29 17:48
| 洋書
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