2013年 01月 13日
夢十夜 |
『冥途』『画本 厄除け詩集』『猫町』と読んできた文学の名作と金井田英津子の絵のコラボ本。実に贅沢なつくりで、手にとって読むことを楽しめる本になっているのですが、これほどこだわっていたのではとうてい採算はとれなかっただろうなと思います。当然というか、出版元のパロル舎は2011年に倒産してしまいました。残念なことです。
『漱石の妻』の中で鏡子がこれを読み、第一夜に出てくる白百合の女は、漱石が若いころに恋をしていた夭逝した嫂であろうと考え、嫉妬にもだえるシーンが描かれていましたが、心あたりがあるときにこういうものを読んだら、確かに心穏やかではいられませんね。それにしても漱石のロマンチックなこと。
西へ西へと果てしのない旅を続ける船の話は、イギリスに旅立ったときの心細い気持ちから出たものでしょうか。行くときからこんなふうだったのなら、現地でノイローゼになってしまったのも無理はありません。でも、語り手が船から飛び込んだ途端に「心の底からよせばよかったと思った」というあたりはなんともいえないおかしみがあります。
それにしても、装丁には特別のこだわりを持っていた漱石が、この本を見ていたらどれほど喜んだことでしょうね。
夢十夜
作者:夏目漱石
装画:金井田英津子
出版社:パロル舎
ISBN:4894192063
『漱石の妻』の中で鏡子がこれを読み、第一夜に出てくる白百合の女は、漱石が若いころに恋をしていた夭逝した嫂であろうと考え、嫉妬にもだえるシーンが描かれていましたが、心あたりがあるときにこういうものを読んだら、確かに心穏やかではいられませんね。それにしても漱石のロマンチックなこと。
西へ西へと果てしのない旅を続ける船の話は、イギリスに旅立ったときの心細い気持ちから出たものでしょうか。行くときからこんなふうだったのなら、現地でノイローゼになってしまったのも無理はありません。でも、語り手が船から飛び込んだ途端に「心の底からよせばよかったと思った」というあたりはなんともいえないおかしみがあります。
それにしても、装丁には特別のこだわりを持っていた漱石が、この本を見ていたらどれほど喜んだことでしょうね。
夢十夜
作者:夏目漱石
装画:金井田英津子
出版社:パロル舎
ISBN:4894192063
by timeturner
| 2013-01-13 19:04
| 和書
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