2012年 12月 04日
海の上の少女―シュペルヴィエル短篇選 |
最初の四分の一は先日読んだ『海に住む少女』と同じ内容で、そのほかに3つの短編集からとられた作品が収められています。全20編。
シュペルヴィエルが出した4つの単行本を刊行順に並べ、そこからピックアップしたものですが、厳密に言うと発表年代順ではないようです。でも、通して読んでいると、最初のほうに実にピュアでお伽噺的な作品から後半のギリシャ神話や旧約聖書を題材にとった、どちらかというとおっさん的ユーモアにあふれる作品へと、作者の年齢を反映しているような気がしないでもない。
作品は同じでも訳者が違うとずいぶんと印象が変わるもので、私の中では先に読んだ光文社新訳文庫の訳がもうシュペルヴィエルの訳として定着してしまい、こちらは端正な訳でおとなっぽい分そっけない気がしてしまうのですが、先にこちらを読んでいたらあちらはちょっと子供っぽく感じたかもしれません。中盤から後半にかけての作品はこの訳者のほうが合ってるだろうな。
哀しいんだけど冷たくはなくて、温かいけれど皮肉で、突き放しているかと思えば包みこむようなところもある。訳者あとがきでは「二面性」という言葉が何度も出てきますが、そういうことなんでしょうか。いずれにしてもすぐれた詩人としての資質がおおいに投影されていることは確か。
海の上の少女―シュペルヴィエル短篇選 (大人の本棚)
作者:ジュール・シュペルヴィエル
訳者:綱島寿秀
出版社:みすず書房
ISBN:4622080508
シュペルヴィエルが出した4つの単行本を刊行順に並べ、そこからピックアップしたものですが、厳密に言うと発表年代順ではないようです。でも、通して読んでいると、最初のほうに実にピュアでお伽噺的な作品から後半のギリシャ神話や旧約聖書を題材にとった、どちらかというとおっさん的ユーモアにあふれる作品へと、作者の年齢を反映しているような気がしないでもない。
作品は同じでも訳者が違うとずいぶんと印象が変わるもので、私の中では先に読んだ光文社新訳文庫の訳がもうシュペルヴィエルの訳として定着してしまい、こちらは端正な訳でおとなっぽい分そっけない気がしてしまうのですが、先にこちらを読んでいたらあちらはちょっと子供っぽく感じたかもしれません。中盤から後半にかけての作品はこの訳者のほうが合ってるだろうな。
海の上の少女それにしても、この人の良さは表現するのがむずかしい。いろいろなジャンルを思い出させるけれど、よく考えると違うような気もする。別にジャンル分けをする必要なんてないけど、読んだときに覚えた感動をなんらかの形で言葉に表せないと落ち着かないじゃないですか。
抹桶の牛と驢馬
セーヌから来た名なし嬢
ラニ
ヴァイオリンの声をした少女
ノアの方舟
年頃の娘
牛乳のお粥
蝋の市民たち
また会えた妻
埋葬の前
オルフェウス
エウロペの誘拐
ヘーパイストス
カストールとポリュデウケス
ケルベロス
トビトとトビア
あまさぎ
三匹の羊をつれた寡婦
この世の権勢家
哀しいんだけど冷たくはなくて、温かいけれど皮肉で、突き放しているかと思えば包みこむようなところもある。訳者あとがきでは「二面性」という言葉が何度も出てきますが、そういうことなんでしょうか。いずれにしてもすぐれた詩人としての資質がおおいに投影されていることは確か。
海の上の少女―シュペルヴィエル短篇選 (大人の本棚)
作者:ジュール・シュペルヴィエル
訳者:綱島寿秀
出版社:みすず書房
ISBN:4622080508
by timeturner
| 2012-12-04 20:19
| 和書
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