2012年 10月 04日
牧師館の殺人 |
閑静な小村セント・メアリ・ミード村で殺人事件が起きた。誰からも嫌われていた退役大佐がこともあろうに牧師館の書斎で射殺されているのがみつかったのだ。すぐに犯人と目される画家が自首し、事件は解決と思われたのだが・・・。ミス・マープル初登場の作品。
『忘られぬ死』はミステリーというより人間ドラマという趣でしたが、こっちは最初から謎ときをゲームのように楽しむためのお話という感じ。さりげなく散りばめられた伏線をたどって推理を積み上げていく楽しさを味わえました。殺された人間が実にいやな奴なので作中人物たちはもちろんのこと、読むほうもまったく罪悪感を感じずに楽しめるのがいいですね。
語り手である牧師があまり聖職者らしくなく人間的なところもいい。ところどころでくすっと笑ってしまうような皮肉なユーモアが効かせてあるのがいかにもイギリス的だし。のんびりした村の雰囲気はなんとなく「Cranford」を思い出させます。個性豊かな老嬢連とか、ダメ女中メアリーとか、ヒューマニスト医師とか、脇役のキャラがどれも立ってて、こりゃもうシリーズ化する予定なんだなと感じられます。ミス・メープルの甥の作家なんて、もしこれが単独の作品だとしたら出す意味もないキャラクターですもんね。
でも、最後までわからなかったのは牧師に妻のことで匿名の手紙を二度も出したのは誰なのかってこと。どこかに書いてあった? それとも特に意味はなくて、田舎の村でもそういう悪意のある人間はいるってことなの?
図書館で借りる古い文庫はみんな紙が黄ばんでいるところにものすごく細かい文字でぎっしり印刷されているものがほとんどで、老眼鏡をかけても読みにくい。だから、パラパラっとめくっただけで棚に返してしまうことが多いのですが、これも『忘られぬ死』もクリスティー文庫という当たらし目のシリーズで、ふつうの文庫より文字が大きくて行間もゆったりしている。中身が面白いことももちろん大切だけど、二番目に大切なのは読みやすい体裁だなあとつくづく感じる今日この頃。若い頃は文字が小さくてぎっしり詰まっているほうがお得な気がしたものですけどねえ・・・
牧師館の殺人
原題:The Murder at The Vicarage
作者:アガサ・クリスティー
訳者:田村隆一
出版社:早川書房
ISBN:415130035X
『忘られぬ死』はミステリーというより人間ドラマという趣でしたが、こっちは最初から謎ときをゲームのように楽しむためのお話という感じ。さりげなく散りばめられた伏線をたどって推理を積み上げていく楽しさを味わえました。殺された人間が実にいやな奴なので作中人物たちはもちろんのこと、読むほうもまったく罪悪感を感じずに楽しめるのがいいですね。
語り手である牧師があまり聖職者らしくなく人間的なところもいい。ところどころでくすっと笑ってしまうような皮肉なユーモアが効かせてあるのがいかにもイギリス的だし。のんびりした村の雰囲気はなんとなく「Cranford」を思い出させます。個性豊かな老嬢連とか、ダメ女中メアリーとか、ヒューマニスト医師とか、脇役のキャラがどれも立ってて、こりゃもうシリーズ化する予定なんだなと感じられます。ミス・メープルの甥の作家なんて、もしこれが単独の作品だとしたら出す意味もないキャラクターですもんね。
でも、最後までわからなかったのは牧師に妻のことで匿名の手紙を二度も出したのは誰なのかってこと。どこかに書いてあった? それとも特に意味はなくて、田舎の村でもそういう悪意のある人間はいるってことなの?
図書館で借りる古い文庫はみんな紙が黄ばんでいるところにものすごく細かい文字でぎっしり印刷されているものがほとんどで、老眼鏡をかけても読みにくい。だから、パラパラっとめくっただけで棚に返してしまうことが多いのですが、これも『忘られぬ死』もクリスティー文庫という当たらし目のシリーズで、ふつうの文庫より文字が大きくて行間もゆったりしている。中身が面白いことももちろん大切だけど、二番目に大切なのは読みやすい体裁だなあとつくづく感じる今日この頃。若い頃は文字が小さくてぎっしり詰まっているほうがお得な気がしたものですけどねえ・・・
牧師館の殺人
原題:The Murder at The Vicarage
作者:アガサ・クリスティー
訳者:田村隆一
出版社:早川書房
ISBN:415130035X
by timeturner
| 2012-10-04 20:35
| 和書
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