2012年 08月 13日
海からきた白い馬 |
幸運をもたらすと言い伝えられる「海の馬」、植物が緑の海のように繁茂し、孤島のようになってしまった船長の小屋、エビやカモメを笛の音で誘い連れていってしまう笛吹き・・・海にまつわる不思議なお話三編。
知らずに読んだのですが、作者は『村は大きなパイつくり』の人で、道理で美しく幻想的な話のそこかしこに、なんともいえないユーモアが漂っています。登場人物はほとんどが素朴な村人や漁民ですが、それぞれに個性的で憎めないキャラクターの持主です。なにしろいちばん理性的でまともなのは子どもたちなんですから。子どもたちから見た大人や、大人の世界ってこんなふうに見えるんだろうなあ、と納得してしまいました。
いちばんのお気に入りは「緑の海の船長さん」。ヒナギクやタンポポが大人の背丈よりも高く茂り、鳥たちが巣をつくったりしている中で暮らす船長、少年ピーター、少女ポリーはまるで「借りぐらしのアリエッティ」みたいです。怖いような、そんなところで暮らしてみたいような、実にわくわくする気持ちで読むことができました。サイドストーリーとして出てくる、教会の八つの鐘を八人がかりで鳴らす話もいかにもイギリス的でいい感じ。ちょっとドロシー・セイヤーズの『ナイン・テイラーズ』を思い出してしまいました。
ファンタジーだし、実際に不思議なことが起こる話ばかりなんですが、妙にリアルなんですよね。そういう不思議なことが起こっても当たり前に感じられるというか。目の前に浮かんでくるように描かれる風景描写のせいかもしれない。
ファンタジーって美しいものは本当に美しく、恐ろしいものは本気で恐ろしく感じられるように描かれていないと楽しめないものですから、翻訳者の選定はすごく重要だと思う。絵本や児童文学はたいていどこの図書館にも同じ本が1冊以上備えられていることが多いので、予約をして借りることはほとんどなく、図書館内で立ち読みをして気に入ったものだけ借りてくるのですが、これが意外にむずかしい。タイトルやカバー画に惹かれて手にとっても、翻訳が子どもに媚びたような(あるいは馬鹿にしたような?)甘ったれた文章だと、すぐに読む気をなくしてしまうんですよね。
だから、意図しているわけではないのに、借りてきた本の訳者を見ると金原さんだった、猪熊さんだったということが多い。もちろん、私自身の好みも関係しているんでしょうが。
海からきた白い馬
原題:The White Sea Horse, A Tide for The Captain, The Sea Piper
作者:ヘレン・クレスウェル
訳者:猪熊葉子
出版社:岩波書店
ISBN:4001121107
知らずに読んだのですが、作者は『村は大きなパイつくり』の人で、道理で美しく幻想的な話のそこかしこに、なんともいえないユーモアが漂っています。登場人物はほとんどが素朴な村人や漁民ですが、それぞれに個性的で憎めないキャラクターの持主です。なにしろいちばん理性的でまともなのは子どもたちなんですから。子どもたちから見た大人や、大人の世界ってこんなふうに見えるんだろうなあ、と納得してしまいました。
いちばんのお気に入りは「緑の海の船長さん」。ヒナギクやタンポポが大人の背丈よりも高く茂り、鳥たちが巣をつくったりしている中で暮らす船長、少年ピーター、少女ポリーはまるで「借りぐらしのアリエッティ」みたいです。怖いような、そんなところで暮らしてみたいような、実にわくわくする気持ちで読むことができました。サイドストーリーとして出てくる、教会の八つの鐘を八人がかりで鳴らす話もいかにもイギリス的でいい感じ。ちょっとドロシー・セイヤーズの『ナイン・テイラーズ』を思い出してしまいました。
ファンタジーだし、実際に不思議なことが起こる話ばかりなんですが、妙にリアルなんですよね。そういう不思議なことが起こっても当たり前に感じられるというか。目の前に浮かんでくるように描かれる風景描写のせいかもしれない。
ファンタジーって美しいものは本当に美しく、恐ろしいものは本気で恐ろしく感じられるように描かれていないと楽しめないものですから、翻訳者の選定はすごく重要だと思う。絵本や児童文学はたいていどこの図書館にも同じ本が1冊以上備えられていることが多いので、予約をして借りることはほとんどなく、図書館内で立ち読みをして気に入ったものだけ借りてくるのですが、これが意外にむずかしい。タイトルやカバー画に惹かれて手にとっても、翻訳が子どもに媚びたような(あるいは馬鹿にしたような?)甘ったれた文章だと、すぐに読む気をなくしてしまうんですよね。
だから、意図しているわけではないのに、借りてきた本の訳者を見ると金原さんだった、猪熊さんだったということが多い。もちろん、私自身の好みも関係しているんでしょうが。
海からきた白い馬
原題:The White Sea Horse, A Tide for The Captain, The Sea Piper
作者:ヘレン・クレスウェル
訳者:猪熊葉子
出版社:岩波書店
ISBN:4001121107
by timeturner
| 2012-08-13 19:33
| 和書
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