2012年 07月 10日
霧の中の悪魔 |
18世紀のイギリス。父親と七人の子供たちで芝居や魔術を見せるトリート一座は旅芸人の一座としてサセックス州のあたりを回っては芸を見せていた。父親のトリート氏は化学の知識もあり弁もたつ陽気な男だったが、年に二回、みんなが「へんな人」と呼ぶ男が訪れて金を渡す晩だけは陰気に沈みこんだ。だが、ある日、その「へんな人」がやってきて「かしらの命令でもう二度とこない」と告げたとき、次男で13歳の少年ジョージに大変な運命がふりかかる・・・。
ずーっと読みたいと思っていたのですが完全に絶版状態で近所の図書館にもなく、リクエストをしてよその区の図書館から取り寄せてもらってようやく読むことができました。昭和46年の発行ですから無理もないのですが、こんなに面白い本がどうして再版されないのかなあ。
ジョージが準男爵ジョン・デクスター家の誘拐された息子だったことがわかり、屋敷に引き取られるところから読者の意表をつく事件が次々に起こります。ジョージはとても性格のいい子ですが、なにしろ旅芸人一座で育った子ですから、いきなり上流社会に投げ込まれてあれこれ愉快な失敗をしでかします。
優しいけれど誇り高いデクスター卿、何度も子供を亡くしたために冷たく皮肉っぽくなってしまったデクスター卿夫人、デクスター卿の弟でやくざな軍人であるリチャード大尉、死んだ人の魂と話ができるモンタギュ夫人、こそこそと秘密をかぎまわる召使のジョセフなど、興味深い登場人物がたくさん出てきて、子供向けとは思えないひねりのきいた内容でした。
とても読みやすく、それでいて子どもに媚びていない上手な翻訳ですが、おそらく『Smith』の主人公のように庶民の英語で書かれていると思うジョージやトリート一家の話し方が、上流社会の人々とたいして変わりなく訳されていたのがちょっと残念でした。ジョージが嫌味な従兄弟に啖呵をきるシーンなんて、絶対スラングいっぱいのべらんめえ口調だったと思うんですよね。
霧の中の悪魔
原題:Devil in The Fog
作者:リアン・ガーフィールド
訳者:飯島 淳秀
出版社:講談社
ISBN:なし
ずーっと読みたいと思っていたのですが完全に絶版状態で近所の図書館にもなく、リクエストをしてよその区の図書館から取り寄せてもらってようやく読むことができました。昭和46年の発行ですから無理もないのですが、こんなに面白い本がどうして再版されないのかなあ。
ジョージが準男爵ジョン・デクスター家の誘拐された息子だったことがわかり、屋敷に引き取られるところから読者の意表をつく事件が次々に起こります。ジョージはとても性格のいい子ですが、なにしろ旅芸人一座で育った子ですから、いきなり上流社会に投げ込まれてあれこれ愉快な失敗をしでかします。
優しいけれど誇り高いデクスター卿、何度も子供を亡くしたために冷たく皮肉っぽくなってしまったデクスター卿夫人、デクスター卿の弟でやくざな軍人であるリチャード大尉、死んだ人の魂と話ができるモンタギュ夫人、こそこそと秘密をかぎまわる召使のジョセフなど、興味深い登場人物がたくさん出てきて、子供向けとは思えないひねりのきいた内容でした。
とても読みやすく、それでいて子どもに媚びていない上手な翻訳ですが、おそらく『Smith』の主人公のように庶民の英語で書かれていると思うジョージやトリート一家の話し方が、上流社会の人々とたいして変わりなく訳されていたのがちょっと残念でした。ジョージが嫌味な従兄弟に啖呵をきるシーンなんて、絶対スラングいっぱいのべらんめえ口調だったと思うんですよね。
霧の中の悪魔
原題:Devil in The Fog
作者:リアン・ガーフィールド
訳者:飯島 淳秀
出版社:講談社
ISBN:なし
by timeturner
| 2012-07-10 16:18
| 和書
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