2012年 04月 23日
日本語教室 |
母語と脳の関係、カタカナ語の弊害、東北弁標準語説、やまとことばの成立、駄洒落についてなど、日本語について上智大学で行われた連続講義を完全再現したもの。
「英語やフランス語で二時間くらいで終わる芝居を日本語に翻訳して上演すると四、五時間もかかる」そうです。日本語は子音では終わらず、かならず母音が入ること、そして音節の種類が少ないため、区別するためにどうしても一つの語が長くなるからだそうです。芝居ではなく講演でも同じなんじゃないでしょうか。英語やフランス語で、しかも聴衆が専門家ばかりだったら30分で終わる話が、日本語で、聴衆が素人ばかりだったときには二時間以上かかるだろうと想像できます。
だから、全部で182ページあるこの本の中身が、同じページ数の書下ろしの本の半分くらいしか情報がないように思えるのは私の気のせいではないはず。
中身がないと言っているのではありません。いずれの回でも私にとっては初めて聞く話が多く、日本語を書いたり話したりする上で気をつけなくてはと反省させられる点もあったし、日本語についてもっと考えようという気にもさせられました。特に興味深かったのはこれまであまり深く考えたことのなかった発音についての回。
芝居を書くときにはなるべく「い」の音を生かす(「う」の音は口の中を通るときに半分くらい力を落とされて外に出るので途中で消えてしまう)ように気をつけているとか、斉藤茂吉の「最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも」という短歌を通して知る母音の使い分けとか、駄洒落の効用とか、目からウロコ的な指摘がたくさんありました。
「は」と「が」の使い分けに関して、既知の旧情報には「は」を、未知の新情報を受ける場合は「が」を使うという、大野晋氏の説の紹介も面白かった。なるほどお。でもまあ、これは急に説明せよと言われたら困るけれど、日本語を話す両親のもとで育てられた人なら誰でも、考えなくても使いこなせることではあるのですよね。それがノーム・チョムスキーが提唱する「変形生成文法」と呼ばれるものであるというのは知りませんでしたが。
話の中に『私家版 日本語文法』の話が出てきて、昔読んだことがあるけど忘れちゃったなあ、もう一度読んでみなくては、と思ったところで、先日まとめて捨てた中にあったのを思い出しました。まあ、図書館でも借りられるからいいけどね。
日本語教室
作者:井上ひさし
出版社:新潮社
ISBN:4106104105
第一講 日本語はいまどうなっているのか作家・劇作家として日本語を巧みに操り、日本語に関する著作にも多い著者ですから、さまざまな例をとり、実にわかりやすく、適宜笑いもとりながら語られているのはさすがです。私もその場にいて聞いてみたかったなあと思う。
第二講 日本語はどうつくられたのか
第三講 日本語はどう話されるのか
第四講 日本語はどのように表現されるのか
「英語やフランス語で二時間くらいで終わる芝居を日本語に翻訳して上演すると四、五時間もかかる」そうです。日本語は子音では終わらず、かならず母音が入ること、そして音節の種類が少ないため、区別するためにどうしても一つの語が長くなるからだそうです。芝居ではなく講演でも同じなんじゃないでしょうか。英語やフランス語で、しかも聴衆が専門家ばかりだったら30分で終わる話が、日本語で、聴衆が素人ばかりだったときには二時間以上かかるだろうと想像できます。
だから、全部で182ページあるこの本の中身が、同じページ数の書下ろしの本の半分くらいしか情報がないように思えるのは私の気のせいではないはず。
中身がないと言っているのではありません。いずれの回でも私にとっては初めて聞く話が多く、日本語を書いたり話したりする上で気をつけなくてはと反省させられる点もあったし、日本語についてもっと考えようという気にもさせられました。特に興味深かったのはこれまであまり深く考えたことのなかった発音についての回。
芝居を書くときにはなるべく「い」の音を生かす(「う」の音は口の中を通るときに半分くらい力を落とされて外に出るので途中で消えてしまう)ように気をつけているとか、斉藤茂吉の「最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも」という短歌を通して知る母音の使い分けとか、駄洒落の効用とか、目からウロコ的な指摘がたくさんありました。
「は」と「が」の使い分けに関して、既知の旧情報には「は」を、未知の新情報を受ける場合は「が」を使うという、大野晋氏の説の紹介も面白かった。なるほどお。でもまあ、これは急に説明せよと言われたら困るけれど、日本語を話す両親のもとで育てられた人なら誰でも、考えなくても使いこなせることではあるのですよね。それがノーム・チョムスキーが提唱する「変形生成文法」と呼ばれるものであるというのは知りませんでしたが。
話の中に『私家版 日本語文法』の話が出てきて、昔読んだことがあるけど忘れちゃったなあ、もう一度読んでみなくては、と思ったところで、先日まとめて捨てた中にあったのを思い出しました。まあ、図書館でも借りられるからいいけどね。
日本語教室
作者:井上ひさし
出版社:新潮社
ISBN:4106104105
by timeturner
| 2012-04-23 18:11
| 和書
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