2012年 04月 03日
ワーカーズ・ダイジェスト |
32歳の佐藤重信は出張先の大阪で広告代理店の担当者・佐藤奈可子と会い、打ち合わせをした。上司の代理だったし、それっきり会う用事もなく、特に強い印象があったわけでもなかったのだが、同じ年、同じ誕生日であることだけは記憶に残った。ふたりはその後も別の人生、別の仕事を続けていくが・・・。
『婚礼、葬礼、その他』のときに書いた岸本佐知子さんが推してた本というのがこれ。なるほど、岸本さん好みの内容です。すっとぼけたおかしみがあるにもかかわらず、全体に漂う閉塞感は半端じゃない。完全にリタイアしてしまった私でさえ、「ああ、こういう状況になったことあったっけなあ」と少しどよーんとした気分を思い出したりするほど。今の若い人たちの仕事の状況というのは、バブル期に30代を過ごした私なんかとはまるで違うんでしょうね。これを読む限り、ほんとうに大変だよね。
それにしても、男の佐藤も女の佐藤も妙に枯れてて、人生を半分くらいあきらめて生きているようなのが気になり、どこまで読んでも(つらい)仕事の話とB級洋食を食べ歩く以外にはなんの楽しみもない私生活が綿々と綴られていくのに、ふたりの先行きが気になってどんどん読んでしまいます。
有川浩さんだったら、前半三分の一くらいのところで再会の機会を用意して、ラブラブのふたりにするところですが、このふたりはどこまでいっても出会いません。もういっそ最後まで別々の人生だったら面白いかも?と他人事だと思って無責任なことも考えたのですが、さすがにそこまで人の悪い作者ではなかった。そんなことしたら、ふたりに共感して読んでいた若い読者が泣いちゃいますよね。でも、甘すぎないまとめ方に好感度大でした。
オマケについていた短編「オノウエさんの不在」は、しぎ野さんの人物像がいまひとつ作り物めいていて説得力がなかったのだけれど、爽やかなエンディングなので本の締めにもってくるにはよかったのかもしれない。
ワーカーズ・ダイジェスト
作者:津村記久子
出版社:集英社
ISBN:4087713954
『婚礼、葬礼、その他』のときに書いた岸本佐知子さんが推してた本というのがこれ。なるほど、岸本さん好みの内容です。すっとぼけたおかしみがあるにもかかわらず、全体に漂う閉塞感は半端じゃない。完全にリタイアしてしまった私でさえ、「ああ、こういう状況になったことあったっけなあ」と少しどよーんとした気分を思い出したりするほど。今の若い人たちの仕事の状況というのは、バブル期に30代を過ごした私なんかとはまるで違うんでしょうね。これを読む限り、ほんとうに大変だよね。
それにしても、男の佐藤も女の佐藤も妙に枯れてて、人生を半分くらいあきらめて生きているようなのが気になり、どこまで読んでも(つらい)仕事の話とB級洋食を食べ歩く以外にはなんの楽しみもない私生活が綿々と綴られていくのに、ふたりの先行きが気になってどんどん読んでしまいます。
有川浩さんだったら、前半三分の一くらいのところで再会の機会を用意して、ラブラブのふたりにするところですが、このふたりはどこまでいっても出会いません。もういっそ最後まで別々の人生だったら面白いかも?と他人事だと思って無責任なことも考えたのですが、さすがにそこまで人の悪い作者ではなかった。そんなことしたら、ふたりに共感して読んでいた若い読者が泣いちゃいますよね。でも、甘すぎないまとめ方に好感度大でした。
オマケについていた短編「オノウエさんの不在」は、しぎ野さんの人物像がいまひとつ作り物めいていて説得力がなかったのだけれど、爽やかなエンディングなので本の締めにもってくるにはよかったのかもしれない。
ワーカーズ・ダイジェスト
作者:津村記久子
出版社:集英社
ISBN:4087713954
by timeturner
| 2012-04-03 20:11
| 和書
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