2012年 03月 16日
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 |
86歳のマーガレット・サッチャーは認知症の初期にあり、6年前に他界した夫デニスの幻を話相手に孤独な生活を送っている。秘書や娘が身の回りの世話をしてくれてはいるが、夫に対するようには素直になれない。それでもなんとか現実と向き合おうと夫の遺品を整理し始めたマーガレットの脳裏には過去のさまざまなシーンがよみがえる・・・。
邦題を聞いたとき「なにそれ?」と思ったのですが、なんと、その通りの内容でした。予想では最盛期のサッチャーをメインに描き、最後に年老いて二人きりになったときの穏やかな暮らしを見せて終わらせるのかと思っていたので、どこまでいっても後期高齢者のおばあさんがよろよろ歩いているだけなので驚いた。
もちろん首相時代のサッチャーは出てくるし、それより前、娘時代、下院議員に立候補する20代、結婚して幼い子供たちと幸せな暮らしを送る様子も出てはきますが、すべて回想なので、もれなくおばあさんがついてきます。
でもまあ、こうするしかなかったかもなあ、と思いました。「英国王のスピーチ」がヒットしたので二匹目のどじょうを狙ったのでしょうが、描く対象が違いすぎる。現代人にとって英国王室というのは一種のファンタジーみたいなもので、一般人の生活にはほとんど関係をもたない。ジョージ六世は歴代の王様・女王様の中では比較的好意的に考えられている人だし、王妃は人気者でした。それに対してサッチャー政権が行った政策のために苦しみ、今でも憎んでいる人たちは山のようにいて決して人気者とは言えない。夫のことなんて誰も知らないし興味もない。
サッチャーの政治的手腕を称えるようになってはサッチャー嫌いの人たちの反感を買うし、徹底的に批判すると、経済的な建て直しを実現させた業績をもちだす人間が出てくる。だからあくまでも中立を保って、認知症のおばあさんの過去を回想する形にしたんでしょうね。
なんとも中途半端な内容でしたが、それでも退屈せずに見られたのはメリル・ストリープの演技力のおかげでしょうか。さすがに娘時代と20代、30代は別の女優さんが演じていますが、40代から86歳の現在まではすべて演じていて、これがもうすごい。初めの頃は議会で「かなきり声を出すな」とヤジられるようなかん高い不愉快な声で滑舌もはっきりしない話し方なのですが、首相をめざすためにボイストレーニングを受けてからは低く落ち着いた声ではっきり話すようになります。この変り方も見事。そしてやっぱりきれい! 娘時代を演じている女優さんは本物のサッチャーが若い頃はこんなだっただろうなと思われる顔なのですが、中年になるといきなり美人になっていたので笑いました。
でも、サッチャーってオックスフォードでディベート・クラブ「ユニオン」の代表もつとめたこともあるはず。だったら声の出し方もそのときに身につけているんじゃないのかなあ。確か話し方は下層中産階級のそれからオックスフォード流のRPに完全に変えたはず。あと、上流階級の人たちとディナーをとるシーンでずらっと並んだナイフ・・フォークの使い方がわからず、デニスにそっと教えてもらうシーンもあったのですが、これもオックスフォードでは教授たちも出席しての晩餐があり、正式なマナーで食事をする機会はいくらでもあったはず。サッチャーが下層中産階級出身であることを強調するための作り話に見えてしまいました。あるいはサッチャー自身が自らの出自を強調し利用するために広めた話かもしれませんが。
ところで、銀座に行ったついでにきょう開店のユニクロ新銀座店を覗いてみようかと行ってみたのですが甘かった。入場制限をしていてものすごい列。さっさとあきらめました。
原題:The Iron Lady(2011)
上映時間:105 分
製作国:イギリス
監督:フィリダ・ロイド
出演:メリル・ストリープ、ジム・ブロードベント、オリヴィア・コールマン、ロジャー・アラム、スーザン・ブラウン、ニック・ダニング、ニコラス・ファレル、イアン・グレン、リチャード・E・グラント、アンソニー・ヘッド、ハリー・ロイド、アレクサンドラ・ローチ、マイケル・マロニー、ピップ・トレンス、ジュリアン・ワダム、アンガス・ライトほか。
邦題を聞いたとき「なにそれ?」と思ったのですが、なんと、その通りの内容でした。予想では最盛期のサッチャーをメインに描き、最後に年老いて二人きりになったときの穏やかな暮らしを見せて終わらせるのかと思っていたので、どこまでいっても後期高齢者のおばあさんがよろよろ歩いているだけなので驚いた。
もちろん首相時代のサッチャーは出てくるし、それより前、娘時代、下院議員に立候補する20代、結婚して幼い子供たちと幸せな暮らしを送る様子も出てはきますが、すべて回想なので、もれなくおばあさんがついてきます。
でもまあ、こうするしかなかったかもなあ、と思いました。「英国王のスピーチ」がヒットしたので二匹目のどじょうを狙ったのでしょうが、描く対象が違いすぎる。現代人にとって英国王室というのは一種のファンタジーみたいなもので、一般人の生活にはほとんど関係をもたない。ジョージ六世は歴代の王様・女王様の中では比較的好意的に考えられている人だし、王妃は人気者でした。それに対してサッチャー政権が行った政策のために苦しみ、今でも憎んでいる人たちは山のようにいて決して人気者とは言えない。夫のことなんて誰も知らないし興味もない。
サッチャーの政治的手腕を称えるようになってはサッチャー嫌いの人たちの反感を買うし、徹底的に批判すると、経済的な建て直しを実現させた業績をもちだす人間が出てくる。だからあくまでも中立を保って、認知症のおばあさんの過去を回想する形にしたんでしょうね。
なんとも中途半端な内容でしたが、それでも退屈せずに見られたのはメリル・ストリープの演技力のおかげでしょうか。さすがに娘時代と20代、30代は別の女優さんが演じていますが、40代から86歳の現在まではすべて演じていて、これがもうすごい。初めの頃は議会で「かなきり声を出すな」とヤジられるようなかん高い不愉快な声で滑舌もはっきりしない話し方なのですが、首相をめざすためにボイストレーニングを受けてからは低く落ち着いた声ではっきり話すようになります。この変り方も見事。そしてやっぱりきれい! 娘時代を演じている女優さんは本物のサッチャーが若い頃はこんなだっただろうなと思われる顔なのですが、中年になるといきなり美人になっていたので笑いました。
でも、サッチャーってオックスフォードでディベート・クラブ「ユニオン」の代表もつとめたこともあるはず。だったら声の出し方もそのときに身につけているんじゃないのかなあ。確か話し方は下層中産階級のそれからオックスフォード流のRPに完全に変えたはず。あと、上流階級の人たちとディナーをとるシーンでずらっと並んだナイフ・・フォークの使い方がわからず、デニスにそっと教えてもらうシーンもあったのですが、これもオックスフォードでは教授たちも出席しての晩餐があり、正式なマナーで食事をする機会はいくらでもあったはず。サッチャーが下層中産階級出身であることを強調するための作り話に見えてしまいました。あるいはサッチャー自身が自らの出自を強調し利用するために広めた話かもしれませんが。
ところで、銀座に行ったついでにきょう開店のユニクロ新銀座店を覗いてみようかと行ってみたのですが甘かった。入場制限をしていてものすごい列。さっさとあきらめました。
原題:The Iron Lady(2011)
上映時間:105 分
製作国:イギリス
監督:フィリダ・ロイド
出演:メリル・ストリープ、ジム・ブロードベント、オリヴィア・コールマン、ロジャー・アラム、スーザン・ブラウン、ニック・ダニング、ニコラス・ファレル、イアン・グレン、リチャード・E・グラント、アンソニー・ヘッド、ハリー・ロイド、アレクサンドラ・ローチ、マイケル・マロニー、ピップ・トレンス、ジュリアン・ワダム、アンガス・ライトほか。
by timeturner
| 2012-03-16 20:00
| 映画
|
Comments(2)
Commented
by
滝夜叉
at 2012-03-18 11:52
x
お久しぶりです。この作品、楽しみにしていたんですが・・・
そんなに中途半端なんですか~残念!
でも、メリルは一見の価値があるんですね。
日本では、ビジネス関連などで「話し方教室」のようなものがありますが、人を惹きつけるプレゼンやボイス・トレーニングがまだまだメジャーではないですよね?
話し方始め、好感を持たれる服装の選び方等、興味のある分野です。
そんなに中途半端なんですか~残念!
でも、メリルは一見の価値があるんですね。
日本では、ビジネス関連などで「話し方教室」のようなものがありますが、人を惹きつけるプレゼンやボイス・トレーニングがまだまだメジャーではないですよね?
話し方始め、好感を持たれる服装の選び方等、興味のある分野です。
0
Commented
by
timeturner at 2012-03-18 19:47