2012年 02月 01日
歌川国芳展(後期)@森アーツセンターギャラリー |
いやあ、ほんとにほとんどが入れ替わってました。たいした規模だわ。同じだったのは猫や金魚の目玉になりそうな絵だけ。チラシにも使われているだまし絵の顔もありました。それ以外は全部新しく展示されたもの。なので見ごたえがあります。というか、森アーツセンターギャラリー、ロッカーが少ないよ。30個くらいしかないから、よほど運がよくないと荷物は預けられません。きょうは翻訳クラスがあったので荷物が重くて、腰にこたえました。
入場者の数はこの前より多かった。入ったとき(1時ちょっと前)は割合空いていたんですが、帰る頃(2時半くらい)にはかなりの密集度に。平日に行くならお昼どきがねらい目かもしれません。
混んでいるのは例のスカイツリーが描かれている「東都三ツ股の図」のせいかと思ったのですが、あにはからんや、私が行ったときにはこの絵の前には誰もいませんでした。イヤホンガイドの解説もこの絵にはついていなかったせいもあるかもしれません。なかなか良識がありますね、学芸員。
で、確かにスカイツリーそっくりなのですが、あまりにも何度も見すぎたので今さらという気になってしまい、それほど感激しませんでした。作品の出来としては国芳にしてはぼやっとした感じであまり好みではない。この人、武者絵ではあんなに自由奔放で大胆なタッチなのに、風景画や美人画になると妙にマイルドになるような気がします。愛好者に合わせているのでしょうか。風景画もヨーロッパの版画・絵画に影響されたような構図のものは素敵なんですが、そういうのは2、3点しか展示されていなかったので。下の絵、霞ヶ関の風景です!
そういえば武者絵のところにも、同じ構図の西洋絵画の写真が横に貼り出されているものがありました(「誠忠義士肖像 潮田政之丞高教」)。確かになかなかダイナミックな構図でしたが、あの程度の類似は自然にあるような気もする。
今回の展示作品でよかったのは武者絵。前回に増して迫力があって、なおかつユーモラスなものが多くて楽しかった。ほとんどは日本や中国の昔話や歴史物語に出てくるヒーローを描いているわけですが、必ずといっていいほど怪物とのからみがあるんですよね。人間同士で戦っているのって少ない。怪物は龍や鰐、妖怪、蝦蟇(蝦蟇にもたれてる赤い人がジャバ・ザ・ハットに見える「蝦蟇仙人」)、魚から河童(左下でのけぞってる花柄の着物の河童がたまらなく可愛い「和漢凖源氏 花の宴 釈那王」)まで種々様々なんですが、どれもこれも弱そうなんですよ、なぜか。どいつもこいつもヒーローたちに軽くひねりつぶされている。で、その様子を見るとヒーローを応援する気持より、やられてる怪物たちに同情する気持のほうが強くなってくる。作者のシンパシーも完全に怪物寄りだと思えました。やたら強くて威張ってるヒーローなんて、きっと国芳は嫌いだったんだろうなあ。
あ、あと、一見するとドクロ模様の着物なんだけど、よく見ると猫で出来てるという騙し絵仕立ての「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」にも感動しました。しかも黒白の生地は猫だけど、青い生地のほうは萩とススキでドクロ形になっています。
動物や化け物を描いた戯画の類も今回のほうが面白いものが多かったように思います。「化物忠臣蔵」や「林屋正蔵工夫の怪談 百物語化物屋敷の図」なんて、こっそり持って帰りたくなったほど。妖怪の表情がそれぞれに違っていて、たまらなく愉快で、いつまで見ていても飽きません。
魚たちが色々な表情と性格を見せる「魚の心」なんて、知り合いの誰かに似てるような気がしてしまいます。
後期は2/12まで。お見逃しなく。
入場者の数はこの前より多かった。入ったとき(1時ちょっと前)は割合空いていたんですが、帰る頃(2時半くらい)にはかなりの密集度に。平日に行くならお昼どきがねらい目かもしれません。
混んでいるのは例のスカイツリーが描かれている「東都三ツ股の図」のせいかと思ったのですが、あにはからんや、私が行ったときにはこの絵の前には誰もいませんでした。イヤホンガイドの解説もこの絵にはついていなかったせいもあるかもしれません。なかなか良識がありますね、学芸員。
で、確かにスカイツリーそっくりなのですが、あまりにも何度も見すぎたので今さらという気になってしまい、それほど感激しませんでした。作品の出来としては国芳にしてはぼやっとした感じであまり好みではない。この人、武者絵ではあんなに自由奔放で大胆なタッチなのに、風景画や美人画になると妙にマイルドになるような気がします。愛好者に合わせているのでしょうか。風景画もヨーロッパの版画・絵画に影響されたような構図のものは素敵なんですが、そういうのは2、3点しか展示されていなかったので。下の絵、霞ヶ関の風景です!
そういえば武者絵のところにも、同じ構図の西洋絵画の写真が横に貼り出されているものがありました(「誠忠義士肖像 潮田政之丞高教」)。確かになかなかダイナミックな構図でしたが、あの程度の類似は自然にあるような気もする。
今回の展示作品でよかったのは武者絵。前回に増して迫力があって、なおかつユーモラスなものが多くて楽しかった。ほとんどは日本や中国の昔話や歴史物語に出てくるヒーローを描いているわけですが、必ずといっていいほど怪物とのからみがあるんですよね。人間同士で戦っているのって少ない。怪物は龍や鰐、妖怪、蝦蟇(蝦蟇にもたれてる赤い人がジャバ・ザ・ハットに見える「蝦蟇仙人」)、魚から河童(左下でのけぞってる花柄の着物の河童がたまらなく可愛い「和漢凖源氏 花の宴 釈那王」)まで種々様々なんですが、どれもこれも弱そうなんですよ、なぜか。どいつもこいつもヒーローたちに軽くひねりつぶされている。で、その様子を見るとヒーローを応援する気持より、やられてる怪物たちに同情する気持のほうが強くなってくる。作者のシンパシーも完全に怪物寄りだと思えました。やたら強くて威張ってるヒーローなんて、きっと国芳は嫌いだったんだろうなあ。
あ、あと、一見するとドクロ模様の着物なんだけど、よく見ると猫で出来てるという騙し絵仕立ての「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」にも感動しました。しかも黒白の生地は猫だけど、青い生地のほうは萩とススキでドクロ形になっています。
動物や化け物を描いた戯画の類も今回のほうが面白いものが多かったように思います。「化物忠臣蔵」や「林屋正蔵工夫の怪談 百物語化物屋敷の図」なんて、こっそり持って帰りたくなったほど。妖怪の表情がそれぞれに違っていて、たまらなく愉快で、いつまで見ていても飽きません。
魚たちが色々な表情と性格を見せる「魚の心」なんて、知り合いの誰かに似てるような気がしてしまいます。
後期は2/12まで。お見逃しなく。
by timeturner
| 2012-02-01 19:31
| 美術
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