2012年 01月 06日
大聖堂は大騒ぎ |
地方の小都市トールンブリッジの大聖堂でオルガン奏者が何者かに襲われ、意識不明の重体となった。たまたまその地の牧師寮に滞在していたジャーヴァス・フェン教授からの電報でオルガン奏者の代替として招かれた作曲家のジェフリー・ヴィントナーは、ロンドンを発つときからすでに何者かにつけ狙われる・・・。
『愛は血を流して横たわる』の感想で、「ファルス派と言われていたにしてはそれほどドタバタ喜劇めいた部分はなくてちょっとがっかりした」と書きましたが、あれより前の作であるこの作品ではまさにファルス派の面目躍如。前半でジェフリーが百貨店で襲われるところなんてサイレント時代の喜劇映画を見ているかのようなドタバタぶりに大笑いさせられました。
オックスフォード大学の英文学教授であるフェン教授が、やたらと文学からの引用をしたがる田舎警視にうんざりさせられるあたりもくすくすっと笑わされます。『愛は―』にはこれがなかったのも不満だったんですよね。だってそれじゃあ探偵役を英文学教授に設定する意味がないじゃない。
それとは逆に『愛は―』では感じなかったのですが、こちらではフェン教授が高飛車なのにびっくりした。作中でジェフリーが自らをワトソンになぞらえていたり、事件の最中だというのに昆虫採集に熱中するなど(これにはちゃんと落ちがあるんだけど)、クリスピンがフェン教授にシャーロック・ホームズを投影していたのは間違いないと思うのですが、そのホームズでもここまで高飛車ではなかったような。というか、ホームズの場合は高飛車な物言いをしても「変人だから仕方がない」と思える部分が、フェン教授の場合は「なんて傲岸不遜な男なんだ」と思えてしまうのです。フェン教授物を最初から順を追って読んでくれば慣れてしまってそう感じることはないのかもしれませんが。
謎解きそのものは途中ですでに犯人の目星はついてしまうのであとは動機と方法になるんですが、そのあたりはちょっと物足りなさが残りました。いろんな要素を入れすぎたんじゃないかな。巻末の真田啓介による解説によるとやはり『消えた玩具屋』が傑作らしい。これは区内の図書館にはないのでよそから取り寄せてくれるようリクエストしてあります。届くのが楽しみだ。(つまりまだクリスピンを読み続けるつもりなわけで、結局気に入ってるんじゃない?)
大聖堂は大騒ぎ (世界探偵小説全集)
原題:Holy Disorders
作者:エドマンド・クリスピン
訳者:滝口達也
出版社:国書刊行会
ISBN:4336044392
『愛は血を流して横たわる』の感想で、「ファルス派と言われていたにしてはそれほどドタバタ喜劇めいた部分はなくてちょっとがっかりした」と書きましたが、あれより前の作であるこの作品ではまさにファルス派の面目躍如。前半でジェフリーが百貨店で襲われるところなんてサイレント時代の喜劇映画を見ているかのようなドタバタぶりに大笑いさせられました。
オックスフォード大学の英文学教授であるフェン教授が、やたらと文学からの引用をしたがる田舎警視にうんざりさせられるあたりもくすくすっと笑わされます。『愛は―』にはこれがなかったのも不満だったんですよね。だってそれじゃあ探偵役を英文学教授に設定する意味がないじゃない。
それとは逆に『愛は―』では感じなかったのですが、こちらではフェン教授が高飛車なのにびっくりした。作中でジェフリーが自らをワトソンになぞらえていたり、事件の最中だというのに昆虫採集に熱中するなど(これにはちゃんと落ちがあるんだけど)、クリスピンがフェン教授にシャーロック・ホームズを投影していたのは間違いないと思うのですが、そのホームズでもここまで高飛車ではなかったような。というか、ホームズの場合は高飛車な物言いをしても「変人だから仕方がない」と思える部分が、フェン教授の場合は「なんて傲岸不遜な男なんだ」と思えてしまうのです。フェン教授物を最初から順を追って読んでくれば慣れてしまってそう感じることはないのかもしれませんが。
謎解きそのものは途中ですでに犯人の目星はついてしまうのであとは動機と方法になるんですが、そのあたりはちょっと物足りなさが残りました。いろんな要素を入れすぎたんじゃないかな。巻末の真田啓介による解説によるとやはり『消えた玩具屋』が傑作らしい。これは区内の図書館にはないのでよそから取り寄せてくれるようリクエストしてあります。届くのが楽しみだ。(つまりまだクリスピンを読み続けるつもりなわけで、結局気に入ってるんじゃない?)
大聖堂は大騒ぎ (世界探偵小説全集)
原題:Holy Disorders
作者:エドマンド・クリスピン
訳者:滝口達也
出版社:国書刊行会
ISBN:4336044392
by timeturner
| 2012-01-06 19:24
| 和書
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