2011年 11月 16日
ミッション:8ミニッツ |
素晴らしい! 見ているうちから「やったあ!」と思ったのなんて久しぶりかも。たいして予算がかかっているとも思えず(基本的にセットは二つだけ)、CGもほとんど使われていないのにこの緊迫感と感動はなに?
監督のダンカン・ジョーンズは「月に囚われた男」でデビューした人で、デヴィッド・ボウイの息子というのが初めのうちはセールスポイントになっていましたが、いまや父親と対等に渡り合えるだけの才能を見せつけましたね。「月に囚われた男」も凄かったけど、まだ少しマイナー臭というか、映画マニアでないと受けないかも、という部分がありました。でも、この映画は誰が見ても面白い。
人間が死ぬと光の残像のように死ぬ直前の記憶が8分間だけ記録されて残る、という前提から組み立てられたプログラムにより、爆破事故で死んだ男の記憶の中に入り込んだスティーヴンス大尉が爆弾が仕掛けられた場所やテロリストの正体を探り、次に予定されている爆破テロを未然に防ぐための手がかりをみつける、ということなのですが、なにしろ時間は8分しかないので、途中で時間ぎれになっては爆破で意識を失ってカプセル内で目覚め、再び列車内に戻って、ということを何度も何度も、いやというほど繰り返します。何をしてもすでに起こってしまった爆破事故の被害者は救うことができないという虚しさを感じながら。
あら筋だけ聞くと「バタフライ・エフェクト」や「ジャケット」「バンテージ・ポイント」それに「インセプション」あたりを思い出しますし、確かにそれぞれの映画にあった要素は取り入れられている。でも、この映画はそうした過去の映画にはできなかったことをしてるんですね。それは主人公への100%の感情移入。
全体を通してのプロットはわかっていても、話がどういうふうに展開していくのかは観客にはわからないのですが、主人公であるスティーヴンス大尉も同様で、最初に列車の中で目を覚ましたときからずっと、観客はスティーヴンスに寄り添うようにして事件を体験し、謎を少しずつ解いていきます。スティーヴンスと一緒に8分ごとに吹き飛ばされ、欲求不満をかかえたまま列車に戻ります。カプセルが置かれている基地内の様子も観客や大尉には知らせれておらず、それに対する不安も共にします。
こうして1時間以上も同じ経験をしていくからこそ、最後のあのストップモーション・シーンであれほどの感動が得られるんですよね。あそこから以降の展開は若い頃の私だったら「いい作品だけど最後が甘いわね」なんて偉そうに言っていたかもしれないけど、今の私にとっては過去に見た映画の中で最高のストップモーション・シーンかも。
ここも凄いなあと思う部分なんだけど、スティーヴンスの敵はテロリストではなく体制なんですよね。だからテロリストの逮捕はびっくりするほどあっさりと片付けられる。スティーヴンスが、そして観客が真に恐れなくてはならないのは、プログラムを担当している科学者に代表される冷酷な政府。でも、スティーヴンスはその敵に対して怒りをぶつけたり恨んだりはしない。別の手段で脱出してしまう。それを象徴しているのがあのストップモーション・シーンだと思う。
父親やクリスティーナとの関係など、ちょっとオセンチすぎる面もあるのですが、感動的ではあっても盛り上げすぎずないあっさりした処理に好感がもてます。
公式サイトはこちら。
原題:Source Code(2011)
上映時間:93 分
製作国:アメリカ
監督:ダンカン・ジョーンズ
出演:ジェイク・ギレンホール、ミシェル・モナハン、ヴェラ・ファーミガ、ジェフリー・ライト、マイケル・アーデン、キャス・アンヴァー、ラッセル・ピーターズ、スーザン・ベインほか。
監督のダンカン・ジョーンズは「月に囚われた男」でデビューした人で、デヴィッド・ボウイの息子というのが初めのうちはセールスポイントになっていましたが、いまや父親と対等に渡り合えるだけの才能を見せつけましたね。「月に囚われた男」も凄かったけど、まだ少しマイナー臭というか、映画マニアでないと受けないかも、という部分がありました。でも、この映画は誰が見ても面白い。
走る列車の中で目を覚ましたスティーヴンス大尉は見知らぬ女性から親しげに話しかけられて当惑したが、やがて列車内で大爆発が起きて意識を失う。意識を取り戻すと鉄製のカプセルの中にひとり座っており、軍服姿の見知らぬ女性がモニターから話しかけていた・・・。
人間が死ぬと光の残像のように死ぬ直前の記憶が8分間だけ記録されて残る、という前提から組み立てられたプログラムにより、爆破事故で死んだ男の記憶の中に入り込んだスティーヴンス大尉が爆弾が仕掛けられた場所やテロリストの正体を探り、次に予定されている爆破テロを未然に防ぐための手がかりをみつける、ということなのですが、なにしろ時間は8分しかないので、途中で時間ぎれになっては爆破で意識を失ってカプセル内で目覚め、再び列車内に戻って、ということを何度も何度も、いやというほど繰り返します。何をしてもすでに起こってしまった爆破事故の被害者は救うことができないという虚しさを感じながら。
あら筋だけ聞くと「バタフライ・エフェクト」や「ジャケット」「バンテージ・ポイント」それに「インセプション」あたりを思い出しますし、確かにそれぞれの映画にあった要素は取り入れられている。でも、この映画はそうした過去の映画にはできなかったことをしてるんですね。それは主人公への100%の感情移入。
全体を通してのプロットはわかっていても、話がどういうふうに展開していくのかは観客にはわからないのですが、主人公であるスティーヴンス大尉も同様で、最初に列車の中で目を覚ましたときからずっと、観客はスティーヴンスに寄り添うようにして事件を体験し、謎を少しずつ解いていきます。スティーヴンスと一緒に8分ごとに吹き飛ばされ、欲求不満をかかえたまま列車に戻ります。カプセルが置かれている基地内の様子も観客や大尉には知らせれておらず、それに対する不安も共にします。
こうして1時間以上も同じ経験をしていくからこそ、最後のあのストップモーション・シーンであれほどの感動が得られるんですよね。あそこから以降の展開は若い頃の私だったら「いい作品だけど最後が甘いわね」なんて偉そうに言っていたかもしれないけど、今の私にとっては過去に見た映画の中で最高のストップモーション・シーンかも。
ここも凄いなあと思う部分なんだけど、スティーヴンスの敵はテロリストではなく体制なんですよね。だからテロリストの逮捕はびっくりするほどあっさりと片付けられる。スティーヴンスが、そして観客が真に恐れなくてはならないのは、プログラムを担当している科学者に代表される冷酷な政府。でも、スティーヴンスはその敵に対して怒りをぶつけたり恨んだりはしない。別の手段で脱出してしまう。それを象徴しているのがあのストップモーション・シーンだと思う。
父親やクリスティーナとの関係など、ちょっとオセンチすぎる面もあるのですが、感動的ではあっても盛り上げすぎずないあっさりした処理に好感がもてます。
公式サイトはこちら。
原題:Source Code(2011)
上映時間:93 分
製作国:アメリカ
監督:ダンカン・ジョーンズ
出演:ジェイク・ギレンホール、ミシェル・モナハン、ヴェラ・ファーミガ、ジェフリー・ライト、マイケル・アーデン、キャス・アンヴァー、ラッセル・ピーターズ、スーザン・ベインほか。
by timeturner
| 2011-11-16 18:35
| 映画
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