2011年 11月 04日
箱の夫 |
夫がコンサートの券を買ってくれた。珍しく一緒に行くと言う。「私」は夫を運ぶのにちょうどいい大きさの箱を探した・・・。(箱の夫)
母が病院に行っている留守に母の親友だったという女性が訪ねてきた。だが、その人はどう見ても娘の「私」と同じくらいの年頃だ・・・。(母の友達)
後妻に行った先の夫は口うるさいばかりで夫婦らしい会話もなく、体のいい女中のような暮らしだったが、その夫がだんだんと外に出なくなったのをいいことに「私」は不用品を「ガレージ整理」で処分していった・・・。(泳ぐ箪笥)
ある朝、仕事に行く前に新聞を読んでいたら河原で女性の刺殺死体がみつかったという記事を目にした。死体の身体的特徴が詳しく載っており、「私」は急にうれしいような興奮したような気分になった・・・。(天気のいい日)
ほかに「遺言状」「恩珠」「天(アマ)」「水曜日」を収録。
読み始めはなんだかとぼけた話だな、軽く読めそうなんて思ったのだけれど、この人の話ってじわじわと毛細血管にしみこんでくるような怖さがあります。つねにはっきりと最後までは説明せず、読む側が自分で解釈できる余地を残してあるせいなのかもしれません。語り手である「私」がほとんど中年~老年の女性というのがまるで自分の分身のように思えるというのもあるのかしら。
≪よくわからない⇒いろいろ考える⇒自分でも怖すぎて心の奥に押し込んでいたものが顔を出しそうになる⇒あわてて心の奥にふたをする⇒別のことを考える⇒わけがわからないまま怖くなる≫みたいな感じ。
そういう意味では「水曜日」は最初から話の落ち着く先が『召使と私』みたいなんだろうなあ、とわかってしまい意外性はないのですが、それでも登場人物がフランス人の男性同士だった『召使と私』よりも、日本人の女性同士が出てくるこっちのほうが、自分の姿に重なって見えたりもするのでより怖い。
作者:吉田知子
出版社:中央公論社
ISBN:4120028666
母が病院に行っている留守に母の親友だったという女性が訪ねてきた。だが、その人はどう見ても娘の「私」と同じくらいの年頃だ・・・。(母の友達)
後妻に行った先の夫は口うるさいばかりで夫婦らしい会話もなく、体のいい女中のような暮らしだったが、その夫がだんだんと外に出なくなったのをいいことに「私」は不用品を「ガレージ整理」で処分していった・・・。(泳ぐ箪笥)
ある朝、仕事に行く前に新聞を読んでいたら河原で女性の刺殺死体がみつかったという記事を目にした。死体の身体的特徴が詳しく載っており、「私」は急にうれしいような興奮したような気分になった・・・。(天気のいい日)
ほかに「遺言状」「恩珠」「天(アマ)」「水曜日」を収録。
読み始めはなんだかとぼけた話だな、軽く読めそうなんて思ったのだけれど、この人の話ってじわじわと毛細血管にしみこんでくるような怖さがあります。つねにはっきりと最後までは説明せず、読む側が自分で解釈できる余地を残してあるせいなのかもしれません。語り手である「私」がほとんど中年~老年の女性というのがまるで自分の分身のように思えるというのもあるのかしら。
≪よくわからない⇒いろいろ考える⇒自分でも怖すぎて心の奥に押し込んでいたものが顔を出しそうになる⇒あわてて心の奥にふたをする⇒別のことを考える⇒わけがわからないまま怖くなる≫みたいな感じ。
そういう意味では「水曜日」は最初から話の落ち着く先が『召使と私』みたいなんだろうなあ、とわかってしまい意外性はないのですが、それでも登場人物がフランス人の男性同士だった『召使と私』よりも、日本人の女性同士が出てくるこっちのほうが、自分の姿に重なって見えたりもするのでより怖い。
作者:吉田知子
出版社:中央公論社
ISBN:4120028666
by timeturner
| 2011-11-04 19:23
| 和書
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