2011年 09月 08日
回想 子規・漱石 |
四国松山で同郷であり、子規とは子弟関係にあった虚子が出会いから子規の死までを綴る「子規居士と余」と子規の親友として出会い、のちには「ホトトギス」の主宰者と作家として関わるようになった漱石との関係を主に漱石からの書簡によって綴った「漱石氏と私」の2編を収録。
『漱石俳句探偵帖』を読んで漱石と子規の交友関係に興味をひかれ、もう少し詳しい話を知りたいものだとこれを選んだのですが、微妙にこちらの願いとはずれていたかも。というのも、子規との話には漱石がほとんど出てこないし、漱石との話には子規がほとんど出てこない。いささか隔靴掻痒の感あり。
それよりも閉口したのは虚子という人のかなり押し付けがましい性格。子規の話を書いていても漱石の話を書いていても行間に「私(あし)が、私(あし)が」という声が聞こえるような気がするんですよね。これまで読んだ漱石回顧物はいずれも「偉大なる漱石先生万歳!」みたいなものが多かったので新鮮といえば新鮮なんですが、その書き方が時に悪意をも感じるような筆致で、追悼のために書いたと思われる文章にどうしてこういうことを書くかなあ、という部分が見受けられるのです。今読んでいる『ゆめはるか吉屋信子』の中で、虚子が思い違いか悪意かによって書いた文章によってひとりの才能ある女流俳人が精神異常のストーカーのような評価を受けることになってしまった話を読んだばかりなのでよけいにそう感じてしまったのかもしれません。
不思議なのはそういう虚子を子規は愛し、漱石も心許してつきあっていたように見えること。ひょっとしたら実際に面と向かって話すといい人なのかしら。でも、それでいて後になってから毒のあることを書くなんて卑怯ですよね。まあ、そういう何者にも阿ることのない姿勢を良しとしたのかもしれません。
それにしても子規にせよ漱石にせよ自分たちの門人(弟子)に対しては父か兄のような愛情と庇護を与えていたことには感心させられます。漱石などはたまに面倒とは思いながらもしなくてはならないことと心得ている様子が伺われます。
面白かった漱石の手紙。
回想 子規・漱石 (ワイド版岩波文庫)
作者:高浜虚子
出版社:岩波書店
ISBN:4000073184
『漱石俳句探偵帖』を読んで漱石と子規の交友関係に興味をひかれ、もう少し詳しい話を知りたいものだとこれを選んだのですが、微妙にこちらの願いとはずれていたかも。というのも、子規との話には漱石がほとんど出てこないし、漱石との話には子規がほとんど出てこない。いささか隔靴掻痒の感あり。
それよりも閉口したのは虚子という人のかなり押し付けがましい性格。子規の話を書いていても漱石の話を書いていても行間に「私(あし)が、私(あし)が」という声が聞こえるような気がするんですよね。これまで読んだ漱石回顧物はいずれも「偉大なる漱石先生万歳!」みたいなものが多かったので新鮮といえば新鮮なんですが、その書き方が時に悪意をも感じるような筆致で、追悼のために書いたと思われる文章にどうしてこういうことを書くかなあ、という部分が見受けられるのです。今読んでいる『ゆめはるか吉屋信子』の中で、虚子が思い違いか悪意かによって書いた文章によってひとりの才能ある女流俳人が精神異常のストーカーのような評価を受けることになってしまった話を読んだばかりなのでよけいにそう感じてしまったのかもしれません。
不思議なのはそういう虚子を子規は愛し、漱石も心許してつきあっていたように見えること。ひょっとしたら実際に面と向かって話すといい人なのかしら。でも、それでいて後になってから毒のあることを書くなんて卑怯ですよね。まあ、そういう何者にも阿ることのない姿勢を良しとしたのかもしれません。
それにしても子規にせよ漱石にせよ自分たちの門人(弟子)に対しては父か兄のような愛情と庇護を与えていたことには感心させられます。漱石などはたまに面倒とは思いながらもしなくてはならないことと心得ている様子が伺われます。
面白かった漱石の手紙。
「(学生の)卒業論文を読んで居ると頭脳が論文的になって仕舞には自分も何か英語で論文でも書いて見たくなります。決して猫や狸の事は考えられません。僕は何でも人の真似がしたくなる男と見える。泥棒と三日居れば必ず泥棒になります。以上」
回想 子規・漱石 (ワイド版岩波文庫)
作者:高浜虚子
出版社:岩波書店
ISBN:4000073184
by timeturner
| 2011-09-08 22:15
| 和書
|
Comments(0)