2011年 08月 12日
メモリー ルーシー・M・ボストン自伝 |
グリーン・ノウ・シリーズや『海のたまご』など素晴らしい本を生み出したルーシー・M・ボストンの自伝。幼少期から青春時代、結婚までを綴った『意地っぱりのお馬鹿さん』と、ザ・マナーを買いとったところから亡くなる前までを綴った『マナーハウスの思い出』の2冊を合体したものです。
作品群を読んでいたときには良家のお嬢さん育ちで、幸せな結婚をし、お金の苦労などすることもなく生きた人なんだろうなと思っていたのですが、まるで違っていました。確かに良家の子女ではあったし、頭もよくてオックスフォードのサマーヴィル学寮で学んだりもしているのですが、頭がよかったからこそ当時の社会常識に反撥し、自分の好きなように生きようとする独立心旺盛な女性だったようです。
第一次世界大戦の中、ロマンチックな激情に駆られて幼なじみのハロルドと結婚したものの息子が思春期になる頃に離婚、ひとりでイタリアとオーストラリアに長期滞在して絵を描いていましたが、やがて第二次世界大戦の兆しが見えてきて帰国、そこでザ・マナーと出会います。
おそらく父親が残した遺産がある程度はあったのでしょうが、あの時代に女性がひとりで生きていくことは大変だったと思います。しかも周囲の人間とは明らかに違うタイプだったわけですし。戦時中にザ・マナーの近隣の村人たちからドイツのスパイだと密告されたエピソードが出てきますが、彼女のほうでも自分の基準に合わない人間にはまったく関心を示さない頑ななところがあったんじゃないかと思えます。
まあ、そういうふうに自分というものを強く持っていないと小説なんて書けないと思いますが。後半のザ・マナーに関する部分は、その改築の様子から庭作り、洪水のときのエピソードなど、グリーン・ノウ・シリーズに出てきた光景にかぶさるところがたくさんあって、わあ、ほんとうにあるんだ、と感動しました。
悩ましかったのは翻訳がひどくて、何を言いたいのかまるで意味がつかめないところが頻出すること。たとえばこんな感じ。
まるで機械翻訳のようです。おかげで1冊読み終えるのに通常の3倍くらい時間がかかってしまいました。訳者の名前はふたり出ていますが、これは合本しているためで、後半の『マナーハウスの思い出』のほうが最悪です。ふつうに読んで意味がとれない文章をどうして編集者がそのまま通すのか理解に苦しみます。
原題:Memories
作者:ルーシー・M・ボストン
訳者:立花美乃里、三保みずえ
出版社:評論社
ISBN:4566010066
作品群を読んでいたときには良家のお嬢さん育ちで、幸せな結婚をし、お金の苦労などすることもなく生きた人なんだろうなと思っていたのですが、まるで違っていました。確かに良家の子女ではあったし、頭もよくてオックスフォードのサマーヴィル学寮で学んだりもしているのですが、頭がよかったからこそ当時の社会常識に反撥し、自分の好きなように生きようとする独立心旺盛な女性だったようです。
第一次世界大戦の中、ロマンチックな激情に駆られて幼なじみのハロルドと結婚したものの息子が思春期になる頃に離婚、ひとりでイタリアとオーストラリアに長期滞在して絵を描いていましたが、やがて第二次世界大戦の兆しが見えてきて帰国、そこでザ・マナーと出会います。
おそらく父親が残した遺産がある程度はあったのでしょうが、あの時代に女性がひとりで生きていくことは大変だったと思います。しかも周囲の人間とは明らかに違うタイプだったわけですし。戦時中にザ・マナーの近隣の村人たちからドイツのスパイだと密告されたエピソードが出てきますが、彼女のほうでも自分の基準に合わない人間にはまったく関心を示さない頑ななところがあったんじゃないかと思えます。
まあ、そういうふうに自分というものを強く持っていないと小説なんて書けないと思いますが。後半のザ・マナーに関する部分は、その改築の様子から庭作り、洪水のときのエピソードなど、グリーン・ノウ・シリーズに出てきた光景にかぶさるところがたくさんあって、わあ、ほんとうにあるんだ、と感動しました。
悩ましかったのは翻訳がひどくて、何を言いたいのかまるで意味がつかめないところが頻出すること。たとえばこんな感じ。
今日では、なぜその家が歴史を感じさせる雰囲気にみちているのかはっきりしている。それを内側に保持している建物を見ることができるからだ。はじめてその中に入ったとき、私は胸がしめつけられる思いがしたが、私を歓迎の渦に巻き込んだのはその雰囲気だったのだ。
家の内部を見て気持ちがくじけてしまったのだが、それを乗りこえるために、先入的な好感がどこから生れてくるのか理解する必要があった。
まるで機械翻訳のようです。おかげで1冊読み終えるのに通常の3倍くらい時間がかかってしまいました。訳者の名前はふたり出ていますが、これは合本しているためで、後半の『マナーハウスの思い出』のほうが最悪です。ふつうに読んで意味がとれない文章をどうして編集者がそのまま通すのか理解に苦しみます。
原題:Memories
作者:ルーシー・M・ボストン
訳者:立花美乃里、三保みずえ
出版社:評論社
ISBN:4566010066
by timeturner
| 2011-08-12 22:21
| 和書
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