2011年 05月 20日
クラース―イギリス人の階級 |
イギリスの上層・中流階級(アッパー・ミドルクラス)出身の女性ジャーナリストが今でもイギリス社会に脈々と流れている階級意識について調査し、それぞれの階級が教育、職業、結婚、宗教などについてどのような態度をとっているのかを具体的かつユーモラスに分析しています。
上流・中流・労働者といったシンプルな分け方ではなく、上流(貴族)階級のストウクラット一家、上層・中流階級のアップワード一家、中層・中流階級(ミドル・ミドルクラス)のウェーブリッジ一家、下層・中流階級(ロウワー・ミドルクラス)のティール一家、労働者階級のデフィニトリー=ディスガスティング一家、さらには労働者階級から身を起こして百万長者となったいわゆる成金階級のヌボー=リチャーズ一家を想定し、それぞれの夫・妻・子供たちのふるまいをまるで映画でも見ているかのように鮮やかに描き出しています。とにかく庭に植える花にまで階級の違いがあるんですから。ちなみにDefinitelyというのは労働者階級がよくYesの代わりに使う言葉で、上流階級ではAbsolutelyを使うんだそうです。
この本の発行は1979年ですので、今読むといささか古く感じる部分もありますが、具体的な部分での多少の差異はあるにしても、状況はそれほど変わっていないんじゃないでしょうか。
それにしても大変な作業だったろうなあと思うのは、作者も「まえがき」で書いていますが、「階級制度はサンゴのようなもので、階層といってもすでに形成されている階層の上に階層をたえずつくったり、階層の組み換えをしたり」していて、「玉ねぎの層ほどにいくえにも階層が積み重なっていて、一つ一つ階層をむいていくと涙が出てくる」ような状況なのです。
逆に上流階級と労働者階級とに共通点が多く、どちらも他人の思惑はあまり気にせず、中流階級に対しては侮蔑や反感を持っているというのも言われてみるとなるほどなあ、と思わされます。
当然ながら発音やアクセントの話も出てくるのですが、もうあまりにも複雑すぎて途中から覚えようとするのは断念しました。どうせ私は外国人なんだからどんな階級の英語を使おうとかまわないわけですし。とりあえずフランス語起源のきどった言葉(パードン、トイレット、ガトーなど)は下層・中流階級のものだということはわかりました。ブリジット・ジョーンズと母親が使っていましたっけ。
BBCの英語は上層・中流階級のものかと思っていたのですが、1970年代ですでに下層・中流階級の英語になっていたそうです。またコマーシャルを作る場合には対象とする消費者に合わせてどんなアクセントを選ぶかがとても重要で、間違った階級のアクセントで視聴者の反感をかうことを避けるために、ニュートラルで温かい感じに聞こえる北部の訛りを採用することがあるというあたりは、ヨークシャー訛りのショーン・ビーンがよくCMのナレーションに使われることと重なってものすごく納得しました。
クラース―イギリス人の階級
原題:Class
作者:ジリー・クーパー
訳者:渡部昇一
出版社:サンケイ出版
ISBN:4383023142
上流・中流・労働者といったシンプルな分け方ではなく、上流(貴族)階級のストウクラット一家、上層・中流階級のアップワード一家、中層・中流階級(ミドル・ミドルクラス)のウェーブリッジ一家、下層・中流階級(ロウワー・ミドルクラス)のティール一家、労働者階級のデフィニトリー=ディスガスティング一家、さらには労働者階級から身を起こして百万長者となったいわゆる成金階級のヌボー=リチャーズ一家を想定し、それぞれの夫・妻・子供たちのふるまいをまるで映画でも見ているかのように鮮やかに描き出しています。とにかく庭に植える花にまで階級の違いがあるんですから。ちなみにDefinitelyというのは労働者階級がよくYesの代わりに使う言葉で、上流階級ではAbsolutelyを使うんだそうです。
この本の発行は1979年ですので、今読むといささか古く感じる部分もありますが、具体的な部分での多少の差異はあるにしても、状況はそれほど変わっていないんじゃないでしょうか。
それにしても大変な作業だったろうなあと思うのは、作者も「まえがき」で書いていますが、「階級制度はサンゴのようなもので、階層といってもすでに形成されている階層の上に階層をたえずつくったり、階層の組み換えをしたり」していて、「玉ねぎの層ほどにいくえにも階層が積み重なっていて、一つ一つ階層をむいていくと涙が出てくる」ような状況なのです。
階級は何に似ているかといえば、洗いざらしのラグビー・シャツの大きな縞模様のようなものだ、と思う。つまり、ラグビー・シャツの何本もの横縞がそれぞれ上下に隣合った縞に色をにじませてしまって、縞の境界がはっきりとしなくなる。ところが、そのように階級も上下の別が判然としなくなったところにいる人びとこそ、自分より上の階層とつきあいがあるのだ、と鼻にかけるのだ。特にわかりにくいのは中流階級で、それはジェイン・オースティンの小説の中にも見られるのですが、中流階級の中での位置の移動というのが非常に流動的だからなんですね。どれほど努力しても貴族の地位は得られないけれど、子供に教育を受けさせて社会的地位の高い職業につかせることができれば、子供の代からは同じ中流でもひとつ上の階層に移動できるわけですから。
逆に上流階級と労働者階級とに共通点が多く、どちらも他人の思惑はあまり気にせず、中流階級に対しては侮蔑や反感を持っているというのも言われてみるとなるほどなあ、と思わされます。
当然ながら発音やアクセントの話も出てくるのですが、もうあまりにも複雑すぎて途中から覚えようとするのは断念しました。どうせ私は外国人なんだからどんな階級の英語を使おうとかまわないわけですし。とりあえずフランス語起源のきどった言葉(パードン、トイレット、ガトーなど)は下層・中流階級のものだということはわかりました。ブリジット・ジョーンズと母親が使っていましたっけ。
BBCの英語は上層・中流階級のものかと思っていたのですが、1970年代ですでに下層・中流階級の英語になっていたそうです。またコマーシャルを作る場合には対象とする消費者に合わせてどんなアクセントを選ぶかがとても重要で、間違った階級のアクセントで視聴者の反感をかうことを避けるために、ニュートラルで温かい感じに聞こえる北部の訛りを採用することがあるというあたりは、ヨークシャー訛りのショーン・ビーンがよくCMのナレーションに使われることと重なってものすごく納得しました。
クラース―イギリス人の階級
原題:Class
作者:ジリー・クーパー
訳者:渡部昇一
出版社:サンケイ出版
ISBN:4383023142
by timeturner
| 2011-05-20 21:36
| 和書
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