2011年 03月 10日
マリー=アントワネットの画家 ヴィジェ・ルブラン展@三菱一号館美術館 |
チラシのサブタイトルに《18世紀の「カワイイ」を描いた女たち》というキャッチコピーが添えられていましたが、まさにそんな内容でした。
マリー・アントワネットのお気に入りで、革命前のフランス宮廷で王妃や宮廷人たちの肖像画家として人気を博した女性画家ヴィジェ・ルブランの作品を中心に、同時代に活躍した女性画家たちの作品を集めた「女だらけ」の展覧会です。当然、見にきている人たちも女性が多く、ミュージアムショップは薔薇で飾られ、女性好みの小物が並んで、ちょっと男性には居心地が悪いだろうなあという雰囲気でした。
実は行く前にはそれほど期待していなかったのです。フラゴナールなどロココの絵は子どもだの犬だのを「ほら、可愛いでしょー?」とばかりに描いていて、それが大好きという人もたくさんいるわけですが、私はどうも甘ったるいような気がして好きになれない。でも、実際に見てみたらかなりよかったです。
確かに真っ赤なほっぺや華麗な服装はロココっぽいし、犬が描かれている絵の前で「まあ、可愛いワンちゃん」とか言ってるおばさま方もいらっしゃいましたが、かなりの部分を占める女性の肖像画や、女性画家だからなのか(たぶん実物よりよく描かれているであろうと思われる)やたらと多い自画像には、それぞれの女性の生が感じられました。フラゴナールも妻との共作(「盗まれた接吻」)が1点だけ展示されていましたが、オランダの風俗画風でなかなかよかったです。
ルイ15世妃マリー・レクジンスカが自室のために描いた中国を題材にしたパネル画数点も楽しかった。背景などはプロの画家が何人か手伝ったそうですが、素人とは思えない出来です。行ったことも見たこともない異国の風景を想像力だけでうまく描いていると思う。中国の家の軒先にフランスのカフェみたいな青と白の日よけがかかっていたりするのもご愛嬌。
ヴィジェは革命後、イタリア、オーストリア、ロシアと亡命生活を続け、王政復古後のフランスに戻って天寿を全うしましたが、展示されている同時代の画家の中にはギロチンにかけられた人たちも何人かいて、華やかな宮廷人の肖像画とのギャップにぞくっとするものを感じます。
目玉のマリー・アントワネットを描いた絵は2点ありましたが、どちらもそれほどきれいに描いているとは思えず、どうして王妃自身がそんなに気に入っていたのかいまいちわかりません。ヴィジェと王妃は同い年だったそうですし、多少は割り引いたにしても自画像からかなりの美人だったと想像できるヴィジェと、きれいなものが大好きだった王妃と性格的に合ったのでしょうね。肖像画を描くためには長い間画家と一緒に過ごすわけで、その時間を楽しく過ごせる相手のほうがいいに決まってますから。
それに比べて、何枚もあった自画像(右3点も)はどれも生き生きとしていて話相手を魅了したであろうヴィジェの人柄が伝わってきます。私がいちばん気に入った自画像は、イタリア亡命時代に描かれた、ちょっとフランドル絵画の雰囲気があるものなんですが、他の作品にくらべて地味なせいか、これだけポストカードになっていなくて悲しかった。個人蔵だからか、ネットで検索しても画像すらみつかりません。
で、気になって展示作品データを見てみたのですが、ルーヴルやヴェルサイユから借りたものが多いのは当然として、オーストリア、イギリス、ロシア、アメリカの美術館からも借りていて、さらにはものすごい数の個人蔵作品が・・・。こういうのってどこに何があるかを熟知した人が仲介しているんでしょうか。美術館のキュレーターが全部交渉するのはとてもじゃないけど無理ですよね。ひとつの美術館をとりあげた展覧会なら、交渉先は1ヶ所だからできそうですが、このヴィジェのようにそれほど有名ではない画家の、世界中に散らばった、個人蔵も多く含む作品群を集めるというのは至難の技と思えます。かつて一度だけアメリカでヴィジェ・ルブランの回顧展が行われたことがあるそうなので、それを足がかりにしたのかな。
一緒に行った友人が『マリー・アントワネットの宮廷画家』という、ヴィジェの生涯を描いた本を貸してくれたので、これを読んで記憶の中の絵を反芻したいと思います。
マリー=アントワネットの画家 ヴィジェ・ルブラン展
2011年3月1日(火)~5月8日(日)
三菱一号館美術館
マリー・アントワネットのお気に入りで、革命前のフランス宮廷で王妃や宮廷人たちの肖像画家として人気を博した女性画家ヴィジェ・ルブランの作品を中心に、同時代に活躍した女性画家たちの作品を集めた「女だらけ」の展覧会です。当然、見にきている人たちも女性が多く、ミュージアムショップは薔薇で飾られ、女性好みの小物が並んで、ちょっと男性には居心地が悪いだろうなあという雰囲気でした。
実は行く前にはそれほど期待していなかったのです。フラゴナールなどロココの絵は子どもだの犬だのを「ほら、可愛いでしょー?」とばかりに描いていて、それが大好きという人もたくさんいるわけですが、私はどうも甘ったるいような気がして好きになれない。でも、実際に見てみたらかなりよかったです。
確かに真っ赤なほっぺや華麗な服装はロココっぽいし、犬が描かれている絵の前で「まあ、可愛いワンちゃん」とか言ってるおばさま方もいらっしゃいましたが、かなりの部分を占める女性の肖像画や、女性画家だからなのか(たぶん実物よりよく描かれているであろうと思われる)やたらと多い自画像には、それぞれの女性の生が感じられました。フラゴナールも妻との共作(「盗まれた接吻」)が1点だけ展示されていましたが、オランダの風俗画風でなかなかよかったです。
ルイ15世妃マリー・レクジンスカが自室のために描いた中国を題材にしたパネル画数点も楽しかった。背景などはプロの画家が何人か手伝ったそうですが、素人とは思えない出来です。行ったことも見たこともない異国の風景を想像力だけでうまく描いていると思う。中国の家の軒先にフランスのカフェみたいな青と白の日よけがかかっていたりするのもご愛嬌。
ヴィジェは革命後、イタリア、オーストリア、ロシアと亡命生活を続け、王政復古後のフランスに戻って天寿を全うしましたが、展示されている同時代の画家の中にはギロチンにかけられた人たちも何人かいて、華やかな宮廷人の肖像画とのギャップにぞくっとするものを感じます。
目玉のマリー・アントワネットを描いた絵は2点ありましたが、どちらもそれほどきれいに描いているとは思えず、どうして王妃自身がそんなに気に入っていたのかいまいちわかりません。ヴィジェと王妃は同い年だったそうですし、多少は割り引いたにしても自画像からかなりの美人だったと想像できるヴィジェと、きれいなものが大好きだった王妃と性格的に合ったのでしょうね。肖像画を描くためには長い間画家と一緒に過ごすわけで、その時間を楽しく過ごせる相手のほうがいいに決まってますから。
それに比べて、何枚もあった自画像(右3点も)はどれも生き生きとしていて話相手を魅了したであろうヴィジェの人柄が伝わってきます。私がいちばん気に入った自画像は、イタリア亡命時代に描かれた、ちょっとフランドル絵画の雰囲気があるものなんですが、他の作品にくらべて地味なせいか、これだけポストカードになっていなくて悲しかった。個人蔵だからか、ネットで検索しても画像すらみつかりません。
で、気になって展示作品データを見てみたのですが、ルーヴルやヴェルサイユから借りたものが多いのは当然として、オーストリア、イギリス、ロシア、アメリカの美術館からも借りていて、さらにはものすごい数の個人蔵作品が・・・。こういうのってどこに何があるかを熟知した人が仲介しているんでしょうか。美術館のキュレーターが全部交渉するのはとてもじゃないけど無理ですよね。ひとつの美術館をとりあげた展覧会なら、交渉先は1ヶ所だからできそうですが、このヴィジェのようにそれほど有名ではない画家の、世界中に散らばった、個人蔵も多く含む作品群を集めるというのは至難の技と思えます。かつて一度だけアメリカでヴィジェ・ルブランの回顧展が行われたことがあるそうなので、それを足がかりにしたのかな。
一緒に行った友人が『マリー・アントワネットの宮廷画家』という、ヴィジェの生涯を描いた本を貸してくれたので、これを読んで記憶の中の絵を反芻したいと思います。
マリー=アントワネットの画家 ヴィジェ・ルブラン展
2011年3月1日(火)~5月8日(日)
三菱一号館美術館
by timeturner
| 2011-03-10 15:13
| 美術
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