2010年 11月 27日
『不思議の国のアリス』に見るイギリス文学 2 |
3回コースの2回目。きょうはちょっと生徒数が少なめでした。お天気よかったし、どうしても2回目は気が抜けちゃうんでしょうね。よく見たら男性も2人くらいいました。
きょうのテーマは『不思議の国のアリス』の英語コミュニケーションの不思議」で、私がいちばん興味をもっていた部分。英語で読んでも翻訳で読んでもどこが面白いのかわからないことが何度もあって、もうアリスは私の学力では無理と思いつつも、ひょっとしてコツをつかめばなんとかなるのかもしれない、という一縷の望みにすがってみました。
結論から言うとやっぱり無理(^^;)。
講師の話によると、表音文字を使うインド・ヨーロッパ語族の人たちは、韻を踏むなど音の響きをそろえることで聞いたときに脳が活性化し、気持ちが高揚するんだそうです。ところが日本人にはそういう脳の働きがない。だから、理屈としては「韻を踏んでるな」とはわかっても、気持ちが自然に楽しくなるということはないんだそうです。特に頭韻。脚韻は日本語の詩でもけっこうあるので、なんとなくリズミカルだなと感じることができますが、頭韻は説明されても「で、それが?」と思ってしまうことが多い。例えば『不思議の国のアリス』の冒頭にある詩の2連目。
weather, feather, together が韻を踏んでいることは誰にでもわかりますし、なんとなくリズミカルで気持ちいいと思えないこともない。でも、「t」の頭韻で気分が高揚する日本人はあまりいないと思う。ましてやbreathとvoiceとtongueは縁語になっているなんてこと、文学に詳しい人でないと気づかないでしょう。Wikiを見たら縁語というのは和歌の修辞技法のひとつでもあるんですって。「大江山いく野の道の遠ければ まだふみもみず天の橋立」の青字部分は縁語なのだそうです。あと、日本でも頭韻がないことはなくて「たきのおとはたえてひさしくなりぬれどなこそながれてなほきこえけれ」の太字は頭韻なんだそうですが、古文が苦手だった私は何も覚えていません。ちなみに『Alice's Adventures in Wonderland』というタイトルは、Aの文字で頭韻を踏んでいて、通常は子音を使う頭韻に母音を使っているという点で珍しい、印象的なタイトルになっているのだそうです。
実際のお話に入っても音の響きなどサウンドレベルでのお遊び(Antipodes⇒Antipathiesといった言葉の言い間違い、lesson⇒lessenのようなスペルは違うが同音で意味が異なる語、同音異義語、類似の音のもじり、digging for apples のような実体がともなわないメタ言語など)や、慣用句・慣用表現、単語の入れ替え、詩の替え歌といった文章単位での遊び、さらには論理的、数学的な思考の遊び、(当時の)モラルからの開放といったさまざまな側面からの読み解きが必要なので、素人にはまず無理。逆に言えば研究対象としてはとても面白いものなんだろうなあ、と漠然とわかってきたのがきょうの収穫でしょうか。それを考慮してかきょう渡されたレジュメの後半はかなり長い資料集でした。興味を持った人は自分で勉強しなさい、ということですね。
講義の最初に「鉄道の旅」のビデオからオックスフォードの部分を見せてくれたのですが、懐かしい映像がたくさんあってうれしかったです。あのDVD、レンタルしようかな。
あと、12月上旬に渋谷のシアター・イメージフォーラムで開催されるブ「シネマ・ノーヴォ」で上映予定のブラジル映画「マクナイーマ」の紹介が少しだけありました。1969年の作品でかなりカルト的な作品だそうですが、内容はまさにアリスなんですって。ただし作風は「モンティ・パイソン」+「エル・トポ」だそうですからちょっと覚悟が必要かもしれません。
きょうのテーマは『不思議の国のアリス』の英語コミュニケーションの不思議」で、私がいちばん興味をもっていた部分。英語で読んでも翻訳で読んでもどこが面白いのかわからないことが何度もあって、もうアリスは私の学力では無理と思いつつも、ひょっとしてコツをつかめばなんとかなるのかもしれない、という一縷の望みにすがってみました。
結論から言うとやっぱり無理(^^;)。
講師の話によると、表音文字を使うインド・ヨーロッパ語族の人たちは、韻を踏むなど音の響きをそろえることで聞いたときに脳が活性化し、気持ちが高揚するんだそうです。ところが日本人にはそういう脳の働きがない。だから、理屈としては「韻を踏んでるな」とはわかっても、気持ちが自然に楽しくなるということはないんだそうです。特に頭韻。脚韻は日本語の詩でもけっこうあるので、なんとなくリズミカルだなと感じることができますが、頭韻は説明されても「で、それが?」と思ってしまうことが多い。例えば『不思議の国のアリス』の冒頭にある詩の2連目。
Ah, cruel Three! In such an hour,
Beneath such dreamy weather,
To beg a tale of breath too weak
To stir the 't'iniest feather!
Yet what can one poor voice avail
Against three tongues together?
weather, feather, together が韻を踏んでいることは誰にでもわかりますし、なんとなくリズミカルで気持ちいいと思えないこともない。でも、「t」の頭韻で気分が高揚する日本人はあまりいないと思う。ましてやbreathとvoiceとtongueは縁語になっているなんてこと、文学に詳しい人でないと気づかないでしょう。Wikiを見たら縁語というのは和歌の修辞技法のひとつでもあるんですって。「大江山いく野の道の遠ければ まだふみもみず天の橋立」の青字部分は縁語なのだそうです。あと、日本でも頭韻がないことはなくて「たきのおとはたえてひさしくなりぬれどなこそながれてなほきこえけれ」の太字は頭韻なんだそうですが、古文が苦手だった私は何も覚えていません。ちなみに『Alice's Adventures in Wonderland』というタイトルは、Aの文字で頭韻を踏んでいて、通常は子音を使う頭韻に母音を使っているという点で珍しい、印象的なタイトルになっているのだそうです。
実際のお話に入っても音の響きなどサウンドレベルでのお遊び(Antipodes⇒Antipathiesといった言葉の言い間違い、lesson⇒lessenのようなスペルは違うが同音で意味が異なる語、同音異義語、類似の音のもじり、digging for apples のような実体がともなわないメタ言語など)や、慣用句・慣用表現、単語の入れ替え、詩の替え歌といった文章単位での遊び、さらには論理的、数学的な思考の遊び、(当時の)モラルからの開放といったさまざまな側面からの読み解きが必要なので、素人にはまず無理。逆に言えば研究対象としてはとても面白いものなんだろうなあ、と漠然とわかってきたのがきょうの収穫でしょうか。それを考慮してかきょう渡されたレジュメの後半はかなり長い資料集でした。興味を持った人は自分で勉強しなさい、ということですね。
講義の最初に「鉄道の旅」のビデオからオックスフォードの部分を見せてくれたのですが、懐かしい映像がたくさんあってうれしかったです。あのDVD、レンタルしようかな。
あと、12月上旬に渋谷のシアター・イメージフォーラムで開催されるブ「シネマ・ノーヴォ」で上映予定のブラジル映画「マクナイーマ」の紹介が少しだけありました。1969年の作品でかなりカルト的な作品だそうですが、内容はまさにアリスなんですって。ただし作風は「モンティ・パイソン」+「エル・トポ」だそうですからちょっと覚悟が必要かもしれません。
by timeturner
| 2010-11-27 19:56
| 学習
|
Comments(2)
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atsuko
at 2010-11-29 23:24
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頭韻はたしかに、心躍らないかも・・。大学のゼミが能だったのですが、係りことばオンパレードでしたよ。解説みて、へぇ~。ほぉ~と。こんな遠くの関連の係り言葉を自分の近くに手繰り寄せて(しかも一瞬に!)鑑賞できる人ってすごい!と思っていました。アリスもそのレベルってことですね。確かに研究対象としてはたからものの宝庫かもしれない、と思いました。
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timeturner at 2010-12-01 00:00
atsukoさん
ゼミで能・・・なにからなにまで形而上的だったんですねえ。私はまさに正反対で下世話なことしかしてなかったような気がします。能は高校のときに連れていかれましたけど、当然ながら寝てしまいました(^^;)。今見るとまた違うのかもしれない。試してみようかな。
ゼミで能・・・なにからなにまで形而上的だったんですねえ。私はまさに正反対で下世話なことしかしてなかったような気がします。能は高校のときに連れていかれましたけど、当然ながら寝てしまいました(^^;)。今見るとまた違うのかもしれない。試してみようかな。