2010年 09月 20日
シェイクスピア・シークレット(上・下) |
ロンドンのグローブ座で「ハムレット」の稽古をつけていた演出家ケイトを3年前に決別したハーヴァード大の恩師ロズが訪れ、稽古のあとで会うことを約束させた。渋々ながら待ち合わせの場所に行ったケイトだが、ロズは現れず、火事で焼けたグローブ座の中から彼女の死体が発見された。ロズにもらった小箱の中にはヴィクトリア朝のブローチと、シェイクスピアのファースト・フォリオに関するメモが入っていた・・・。
シェイクスピアの失われた戯曲「カーディニオー」探索と、本当のシェイクスピアは誰だったのか、この2つの迷路をめぐる冒険物語で、言ってみれば『ダ・ヴィンチ・コード』のシェイクスピア版といったところ。作者自身がハーヴァードで英米文学の博士号を持ち、シェイクスピア劇の演出も手がけたこともあるとあって、次から次へと繰り出される虚実入り混じった歴史の薀蓄はすごく説得力があります。どこからどこまでが事実なのかは最後の作者あとがきを読まないと素人にはとてもじゃないけど見破れません。
翻訳クラスで読んだ『Shakespeare's Secret』と似たようなタイトルで、あれもシェイクスピアの正体とエリザベス朝の陰謀をからめた謎解きでした。もちろん、子供向けのあれとは違い、こちらはもっとずっと深いです。でも、そのせいで異常に複雑。上下巻に分かれているせいもあって、途中で「この人は誰だっけ?」とか「このときに何が起きたんだっけ?」としょっちゅう前をめくる羽目に。普通の読者は一気に読まないと消化できないと思う。
シェイクスピア学者の道を捨てた新進気鋭の女性演出家、サーの称号も持つ国際的に有名なシェイクスピア俳優、謎の経歴をもつボディガード、街をひとつ買い取ってエルシニア城を模した豪邸に住む収集家の女富豪、そしてシェイクスピア劇をなぞって次々に人を殺していくマニアックな殺人者・・・。登場人物がユニークで魅力的なのが魅力のひとつですが、主人公の服をファッション雑誌のように説明したり、ヒーロー役の男性を「大理石の彫像かと思うほど硬く引き締まった体」と描写したりするのはハーレクインのようでいただけない。最初のほうでこういうのが出てくるとそこで読むのをやめちゃおうかという気になります。
ところで、作中で重要な役割を果たすニコラス・ヒリヤード作のミニチュア肖像画は、作者がヴィクトリア&アルバート博物館で見た絵にインスパイアされたものだそうです。髪は黒髪から金髪に変えられていますが、その他の描写はまったく同じ。画像がV&A博物館のサイトで見られますので、この絵について書かれた個所にきたらどうぞご覧ください。
原題:Interred with Their Bones
作者:ジェニファー・リー・キャレル
訳者:布施由紀子
出版社:角川書店
ISBN:404791617X、4047916188
シェイクスピアの失われた戯曲「カーディニオー」探索と、本当のシェイクスピアは誰だったのか、この2つの迷路をめぐる冒険物語で、言ってみれば『ダ・ヴィンチ・コード』のシェイクスピア版といったところ。作者自身がハーヴァードで英米文学の博士号を持ち、シェイクスピア劇の演出も手がけたこともあるとあって、次から次へと繰り出される虚実入り混じった歴史の薀蓄はすごく説得力があります。どこからどこまでが事実なのかは最後の作者あとがきを読まないと素人にはとてもじゃないけど見破れません。
翻訳クラスで読んだ『Shakespeare's Secret』と似たようなタイトルで、あれもシェイクスピアの正体とエリザベス朝の陰謀をからめた謎解きでした。もちろん、子供向けのあれとは違い、こちらはもっとずっと深いです。でも、そのせいで異常に複雑。上下巻に分かれているせいもあって、途中で「この人は誰だっけ?」とか「このときに何が起きたんだっけ?」としょっちゅう前をめくる羽目に。普通の読者は一気に読まないと消化できないと思う。
シェイクスピア学者の道を捨てた新進気鋭の女性演出家、サーの称号も持つ国際的に有名なシェイクスピア俳優、謎の経歴をもつボディガード、街をひとつ買い取ってエルシニア城を模した豪邸に住む収集家の女富豪、そしてシェイクスピア劇をなぞって次々に人を殺していくマニアックな殺人者・・・。登場人物がユニークで魅力的なのが魅力のひとつですが、主人公の服をファッション雑誌のように説明したり、ヒーロー役の男性を「大理石の彫像かと思うほど硬く引き締まった体」と描写したりするのはハーレクインのようでいただけない。最初のほうでこういうのが出てくるとそこで読むのをやめちゃおうかという気になります。
ところで、作中で重要な役割を果たすニコラス・ヒリヤード作のミニチュア肖像画は、作者がヴィクトリア&アルバート博物館で見た絵にインスパイアされたものだそうです。髪は黒髪から金髪に変えられていますが、その他の描写はまったく同じ。画像がV&A博物館のサイトで見られますので、この絵について書かれた個所にきたらどうぞご覧ください。
作者:ジェニファー・リー・キャレル
訳者:布施由紀子
出版社:角川書店
ISBN:404791617X、4047916188
by timeturner
| 2010-09-20 17:47
| 和書
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