2010年 04月 22日
他者の苦痛へのまなざし |
写真は戦争やテロに対して抑止効果を持つのか? 南北戦争、ナチの強制収容所、スペイン内戦、中東戦争、アフリカやボスニアの民族紛争、そして2001年9月11日のテロまで、戦争やテロを撮った残虐な写真や映像についての多面的な考察がされています。
よく言われるメディアによる映像や写真の過剰露出により、人々の感覚が麻痺し、そらされてしまっているのではないかという議論ももちろん出てきますが、ソンタグはその事実を認めながらも、それでもそうした現実があることを考える契機になると写真の効用を認めているようです。でも、それって受け止める人の資質にもよりますよね。
考察の中にも触れられていますが、残酷な写真を見ることに喜びを感じる部分というのも人間の中にあるわけで、そうした部分が強い人にとっては単なる娯楽でしかないのかも。あるいはさらにひどく、そうした残虐行為に積極的に関与したいというマイナスの行動に駆り立てるのではないかという危惧を抱いてしまいます。
驚いたのは、「不幸や不正の目撃証拠である写真」が「あまり芸術的に見えると批判を浴びる」という昨今の写真の世界での風潮の中で批判されている写真家としてセバスチャン・サルガドが挙げられていたこと。言われてみれば確かに、彼の写真は美しすぎて撮られている対象の悲惨さから見る人間の意識を遠ざけてしまうかもしれない。でも、まず美しさで関心をとらえ、それから対象物について考えさせるという方向もあるわけで。
考察があまりにも多岐にわたり、なおかつ能天気な私が考えたこともないほど深かったりするので、とても一度読んだだけでは語られていることを理解・把握できません。こういう本は手元に置いておいて、折りにふれ少しずつ読んでみるのがいいのかもしれないなあ。
ところで、写真についての本なのに本文に写真は1枚も掲載されていません。例に挙げられる写真はすべて文字によって説明されています。そしてカバーですら写真ではなくゴヤの有名な版画集『戦争の惨禍』からの1枚。「あえて」なのか予算の関係なのかわかりませんが、読みながらグーグルしてしまうのは間違いなしです。
原題:Regarding The Pain of Others
作者:スーザン・ソンタグ
訳者:北條文緒
出版社:みすず書房
ISBN:4622070472
よく言われるメディアによる映像や写真の過剰露出により、人々の感覚が麻痺し、そらされてしまっているのではないかという議論ももちろん出てきますが、ソンタグはその事実を認めながらも、それでもそうした現実があることを考える契機になると写真の効用を認めているようです。でも、それって受け止める人の資質にもよりますよね。
考察の中にも触れられていますが、残酷な写真を見ることに喜びを感じる部分というのも人間の中にあるわけで、そうした部分が強い人にとっては単なる娯楽でしかないのかも。あるいはさらにひどく、そうした残虐行為に積極的に関与したいというマイナスの行動に駆り立てるのではないかという危惧を抱いてしまいます。
驚いたのは、「不幸や不正の目撃証拠である写真」が「あまり芸術的に見えると批判を浴びる」という昨今の写真の世界での風潮の中で批判されている写真家としてセバスチャン・サルガドが挙げられていたこと。言われてみれば確かに、彼の写真は美しすぎて撮られている対象の悲惨さから見る人間の意識を遠ざけてしまうかもしれない。でも、まず美しさで関心をとらえ、それから対象物について考えさせるという方向もあるわけで。
考察があまりにも多岐にわたり、なおかつ能天気な私が考えたこともないほど深かったりするので、とても一度読んだだけでは語られていることを理解・把握できません。こういう本は手元に置いておいて、折りにふれ少しずつ読んでみるのがいいのかもしれないなあ。
ところで、写真についての本なのに本文に写真は1枚も掲載されていません。例に挙げられる写真はすべて文字によって説明されています。そしてカバーですら写真ではなくゴヤの有名な版画集『戦争の惨禍』からの1枚。「あえて」なのか予算の関係なのかわかりませんが、読みながらグーグルしてしまうのは間違いなしです。
原題:Regarding The Pain of Others
作者:スーザン・ソンタグ
訳者:北條文緒
出版社:みすず書房
ISBN:4622070472
by timeturner
| 2010-04-22 20:34
| 和書
|
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