2009年 06月 02日
青年 |
田舎から文学を志望して上京した青年 小泉純一が、さまざまな人々と出会い、観察し、考えながら自らを見つめ、自分が書きたいものをみつけようとする過程を描く。
これを書いたとき鷗外は49歳だったそうですが、これから何を書いていこうかと模索している作家にとっては自分を青年に例えるのがいちばんしっくりしたのかもしれません。主人公である純一には自らの迷いや抱負を抱えさせ、すでに大人である自分の意見は他の登場人物たちの口を借りて表明する、という形になっています。正宗白鳥、夏目漱石、鷗外自身と思われる人物も登場し、当時の文学というものに対する鷗外の視点が語られるあたりはかなり面白い。一緒になって読むほうも考えさせられるからね。
ただ、謎めいた目をもつファム・ファタル坂井夫人に惹かれながら、最後に彼女を単なる「肉の塊」と捕えることに成功して、そこから伝説を題材にした小説を書くことを決心するというのがどうにもこうにもわかりません。一体どういう関係が? おそらく鷗外の頭の中ではきちんとした筋道があるんだろうとは思うんですが、私にはそこまで読み取れませんでした。本人が目の前にいたら膝突き合わせて問い詰めたいところです。
それにしてもまあ、この頃の大学生や書生というのは実に教養があったんですね。語学力も凄いし読書量(しかも原書で読んでる)も半端じゃない。今の大学生なんて当時の人に比べたら小学生くらいのレベルなんじゃないかな。
作者:森 鷗外
出版社:岩波文庫
ISBN:4003100549
これを書いたとき鷗外は49歳だったそうですが、これから何を書いていこうかと模索している作家にとっては自分を青年に例えるのがいちばんしっくりしたのかもしれません。主人公である純一には自らの迷いや抱負を抱えさせ、すでに大人である自分の意見は他の登場人物たちの口を借りて表明する、という形になっています。正宗白鳥、夏目漱石、鷗外自身と思われる人物も登場し、当時の文学というものに対する鷗外の視点が語られるあたりはかなり面白い。一緒になって読むほうも考えさせられるからね。
ただ、謎めいた目をもつファム・ファタル坂井夫人に惹かれながら、最後に彼女を単なる「肉の塊」と捕えることに成功して、そこから伝説を題材にした小説を書くことを決心するというのがどうにもこうにもわかりません。一体どういう関係が? おそらく鷗外の頭の中ではきちんとした筋道があるんだろうとは思うんですが、私にはそこまで読み取れませんでした。本人が目の前にいたら膝突き合わせて問い詰めたいところです。
それにしてもまあ、この頃の大学生や書生というのは実に教養があったんですね。語学力も凄いし読書量(しかも原書で読んでる)も半端じゃない。今の大学生なんて当時の人に比べたら小学生くらいのレベルなんじゃないかな。
作者:森 鷗外
出版社:岩波文庫
ISBN:4003100549
by timeturner
| 2009-06-02 19:43
| 和書
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